仏像、ときどきワンダー観光

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【仏像の知識】十二神将とは? - 薬師如来に従う12の夜叉

十二神将(じゅうにしんしょう)とは?

薬師如来を囲む十二神将(新薬師寺拝観リーフレットより)

 

十二神将は、薬師如来の眷属(侍者)をつとめる12の夜叉(やしゃ)の総称。
ちなみに夜叉とは、古代インド神話に登場する鬼神です。

なぜ、鬼神が薬師如来の家来になったかといいますと

釈迦が『薬師経』を説いていたとき、弟子たち以外にも聞き耳を立てている異形のもの(夜叉)たちがいたそうです。
薬師如来が人々を救うために12の願いを立てたことを聞いた12の夜叉たちは、薬師如来をサポートすることを決意します。

各夜叉が、それぞれ7000もの部下を率いているので、薬師如来にはとんでもない数の守護者がいるわけですね。

詳しい特徴を見ていきましょう。

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十二神将像の特徴

戦いの姿&怖い顔

十二神将 (魅惑の仏像 9)

薬師如来や、薬師如来を敬う人々を守るガードマンですので、強そうな姿をしています。
甲冑をまとい、武器を持つ、闘う姿。
顔も忿怒相(怒りの表情)をしていることが多いです。

頭に動物(十二支)を乗せることも(平安時代後期以降)

本来、十二神将と十二支(干支)は無関係でしたが、のちに中国の信仰と結びつき、動物を乗せるようになりました。
平安時代以降のお像では、頭上に干支を乗せるのが一般的です。

具体例(頭に乗せているのは小動物めいていますが、トラ!)

十二神将のうち寅神像の顔

東大寺所蔵の十二神将のうち寅神(「奈良国立博物館だより110号」より)

ただし、どの大将がどの動物をつけるかは、曖昧な部分があるようで、お像によって異なります。

十二神将メンバー

イスムTanaCOCORO[掌] 十二神将 セット_仏像 フィギュア 国宝 薬師如来 イSム (じゅうにしんしょう) tc3518

(AmazonよりイスムTanaCOCORO[掌] 十二神将 セット_仏像 フィギュア 国宝 薬師如来 イSム (じゅうにしんしょう) tc3518


・毘羯羅(びから)大将:子
・招杜羅(しょうとら)大将:丑
・真達羅(しんだら)大将:寅
・魔虎羅(まこら)大将:卯
・波夷羅(はいら)大将:辰
・因達羅(いんだら)大将:巳
・珊底羅(さんてら)大将:午
・頞你羅(あにら)大将:未
・安底羅(あんてら)大将:申
・迷企羅(めきら)大将:酉
・伐折羅(ばさら)大将:戌
・宮毘羅(くびら)大将:亥 

名前の漢字が難しいので、全員覚えるのは大変そうですが、自分の干支担当の方は要チェックしておくと、仏像観賞時により楽しいです。
※干支については、参考文献などで一般的に記載されているものを記載しています。

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十二神将像の実例

奈良 新薬師寺 本堂

十二神将といえばまず思い浮かぶのは新薬師寺のお像。
特に、伐折羅(ばさら)大将の写真は仏像本の表紙などにもよく採用されるので、ご覧になったことがあるかたも多いかも。

この本の表紙の方です。

大和の古寺〈4〉新薬師寺・白毫寺・円成寺・大安寺

悪しきものを叱り飛ばしているような、リアルな表情。

宮毘羅(くびら)大将も、表情がダイナミック。
声が聞こえてきそう。

アイドルと巡る仏像の世界 (NHK趣味どきっ!)


ポーズでいうと、頞你羅(あにら)大将もおもしろい。
手に矢を持ち、その矢が曲がっていないかを目を細めて見ている姿です。

拝観レポート>>>新薬師寺 - 十二神将に守られし薬師如来

shishi-report-2.hatenablog.com

 

公式サイト>>>新薬師寺 公式ホームページ 十二神将

奈良 室生寺 宝物殿

頭に動物を乗せたタイプの十二神将(のうち6体)。
写実性がありつつも、ポージングなどは誇張されていて、興味深いです。

特に未神は、頬杖をついて空を見上げるようなしぐさをしていてユーモラス。

公式サイト>>>寶物殿 - 女人高野 室生寺

奈良県 興福寺 東金堂・国宝館

像高113~126cm なので、(すごい仏像が集結している東金堂内においては)あまり目立つ感じではないのですが、それぞれに個性的な動きが感じられます。

公式サイトの写真>>>https://www.kohfukuji.com/property/b-0030/

拝観レポート(十二神将にはほぼ触れておりませんがご参考まで)>>>興福寺 東金堂 - 厳しいお顔の維摩居士像


ちなみに、興福寺の国宝館のほうには、板彫りの十二神将があります。
こちらは貴重なうえ、かなりユニークです。
(こういう表現は適切ではないのかもしれませんが)鼻がブタさんのようになっていたり、ポージングが大げさだったり、インパクト大。

初めて観たときは「な、、、なんじゃこりゃ」となりました。

公式サイトの写真>>>https://www.kohfukuji.com/property/b-0024/

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おわりに

新薬師寺の十二神将など、古い時代のお像は、ザ・武将という感じで迫力があります。
一方、平安後期以降の、頭に動物を乗せているお像はかわいらしさというか、親しみやすい印象。

頭上に乗せる動物と、表情をリンクさせているお像も多いので、なかなかユーモラスなお像もあり、私はけっこう好きです。 

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shishi-report-2.hatenablog.com

 >>>一覧はこちらから

参考文献

仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)

写真・図解 日本の仏像 この一冊ですべてがわかる!

イラストでわかる 日本の仏さま (文庫)

天の仏像のすべて (エイムック 2696)

お経と仏像で仏教がわかる本【完全保存版】 (洋泉社MOOK)

アイドルと巡る仏像の世界 (NHK趣味どきっ!)