愛染明王(あいぜんみょうおう)とは?
愛欲を悟りへと浄化させる愛染明王。
明王としては珍しい、真っ赤なお身体をしています。
敬愛(人間関係を良くする)のご利益があることから、のちに恋愛成就の祈願へとつながったようです。
江戸時代には花魁や芸者の守り本尊という面もあったのだとか。
また、「染」という字がつくので、染色関係の仕事につく人の守り本尊しても信仰されています。
詳しい特徴を見ていきましょう。
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愛染明王像の特徴
赤いボディ
愛欲を表すという赤い体をしています。
※古い仏像では彩色が剥がれている場合もあります。
頭上に獅子の冠を載せている
逆立った髪(焔髪)に獅子冠(ししかん)を載せています。
なぜ獅子かというと、獅子は苦難にも屈しないという強さの象徴なんですね。
さらにこの獅子冠の上には、五鈷鉤(ごここう)というアイテムも載せています。
1つのお顔に目が3つ、腕6本(一面三目六臂)
お顔は一面で、目が三つ。
腕は6本です。
それぞれの手には金剛杵(こんごうしょ)、金剛鈴(こんごうれい)のほか、弓、矢、剣などの武器も持っています。
金剛杵と金剛鈴は密教の法具。鈴を鳴らして如来や菩薩の注意をひきます。
弓矢で、人々を惑わせるものを射るのだとか。
左の第三手は何も持たず、こぶしをつくることが多いようです。
宝瓶(ほうびょう)の上の蓮華座に座っている
宝瓶(ほうびょう)とは、宝物を吐き出すという壺。
この壺の上に蓮華座が置かれ、その上に座っています。
光背は赤い日輪
明王の光背といえば、燃え盛った炎(迦楼羅炎:かるらえん)が多いですが、愛染明王は日輪光背(日輪は太陽を表す)です。
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愛染明王像の実例
座っている像(坐像)が基本となります。
奈良 西大寺 愛染堂
奈良仏師善円の作。像高32 cmの小像です。
憤怒相というよりは、ちょっとびっくりしたような表情にも見え、温厚な作風。
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山梨 放光寺
顔の正面で弓をかまえ、天に向けて放とうとしている姿の「天弓愛染明王」です。
愛染明王が登場するお経の中の「衆星の光を射るが如し」という部分を具現化したお像。
公式サイト>>>ようこそ放光寺へ
東京国立博物館 本館1階11室
写真>>>東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 愛染明王坐像(あいぜんみょうおうざぞう)
本記事の冒頭写真で紹介している愛染明王像。
公式サイトの写真では、厨子に入った状態ですが、私が過去に観覧したときは厨子から出た状態で、非常に見やすかったです(写真もOKでした)。
※展示は定期的に替わりますので、公式サイトで展示期間をご確認のうえ、お出かけください。
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おわりに
愛欲を無理に消すのではなく、悟りへ昇華しよう、という愛染明王。
ぱっと見、雰囲気が馬頭観音坐像と似ているケースがあるのですが、迷ったときは、頭上の生き物をよく観察してみましょう。
馬なら馬頭観音、獅子なら愛染明王となりますね。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)