馬頭観音(ばとうかんのん)とは?
その名の通り、頭上に馬の頭をのせている馬頭観音。
観音様といえば、柔和な表情が思い浮かびますが、馬頭観音だけは怒りの表情(忿怒相:ふんぬそう)をしています。
馬のように煩悩をむさぼり食い、忿怒相で諸悪(苦悩や災難)を打ち砕いてくれる存在です。
近世以降は、家畜や馬の守り神としての面もあるようです。
道端や、競馬場に石仏や石碑として建てられることも。
では、馬頭観音の特徴を見ていきたいと思います。
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馬頭観音の特徴
頭上に馬の頭をのせている
冒頭でも述べましたが、馬の頭部を乗せているのが一番の特徴ですかね。
「頭上に馬」と聞くと、ものすごく奇抜に感じますが、実物を見ると、馬の存在感は意外と控えめ。
(頭上の馬のイメージ 馬の絵が難しい汗)
観音像は、髪を高く結い上げていたり、宝冠をかぶっていたりして、頭上がにぎやかなので、よく見ないと、馬がいることを見逃してしまったりします。
忿怒相(怒りの表情)をしている
観音・菩薩カテゴリでは唯一(※)の忿怒相。
(※ 十一面観音の頭上には、忿怒相をしている小さいお顔があります)
忿怒相といったら明王(例:不動明王など)なので、表情だけ見ると、ちょっと混乱するかもしれません。
馬頭印を結ぶ
馬頭印という特殊な印相を結んでいます。
これは馬頭観音しか結ばないので、他の仏像と明らかに違いますね。
なお、馬頭印とは
胸の前で親指、中指、小指を立て、残りはまげて両掌を合わせる
石井亜矢子『仏像の見方ハンドブック』p.53
合掌のポーズから、人差し指と薬指だけ曲げる感じ。
やってみると結構難しいです。
お顔・手が複数あることも
お顔が三面&手が六本(三面六臂)や、お顔が四面&手が八本(四面八臂)の像が多い印象です。
馬頭観音像の実例
「馬頭観音」ってお名前はよく聞くのですけど、博物館美術館の展示会などではあまりおみかけしない気がします(木造としての仏像は少ないのか)。
木造の仏像よりも、道端にたてられている石仏とかのほうが多い気がしますね。
立像(立っているタイプ)
京都 淨瑠璃寺 (奈良国立博物館へ寄託)
馬頭観音としては最も有名なお像の一つでしょうか。
お顔が四面、手が八本のタイプ。
奈良国立博物館で管理しているようなので、浄瑠璃寺では通常は拝観できないと思われます。
奈良国立博物館の企画展などで陳列されることはあるようです。
(リンクを貼りたかったのですが、写真見つからず)
京都 大報恩寺
京都大報恩寺は六観音(六道から人々を救う仏)が有名ですが、そのうちの一軀が馬頭観音です。
肥後定慶(ひごじょうけい)の作とされています。
私は東京国立博物館にて開催された特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」で拝観しました。
額に第三の眼があるのですが、そちらも玉眼(水晶の板が入っている)で、リアルでした。
忿怒相とはいえ、丸顔なので、かわいらしい印象も受けました。
観覧レポート>>>【東京国立博物館】快慶・定慶のみほとけ③ - 肥後定慶の六観音
shishi-report-2.hatenablog.com
公式サイト>>>トップページ|千本釈迦堂 大報恩寺
坐像 (座っているタイプ)
福井 中山寺
普段は秘仏のお像。
私は東京国立博物館の特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」で拝観しました。
当時はまだ仏像の知識が少なかったため、愛染明王かと思ってしまいましたが(汗)
写真をよく見ると、頭上の馬が輝いていますね。
表情が生き生きとしていて素晴らしいです。
公式>>>青葉山 中山寺|北陸三十三ヶ所 観音霊場 第一番
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おわりに
若狭から丹後(現在の福井県南西部から京都府北部にかけての日本海沿岸地域)には、馬頭観音をご本尊とする寺院が集中しているのだそうです。
馬頭観音像めぐりなども興味深いですね。
美術館や博物館など、単眼鏡を使っても差し支えない場所であれば、頭上の馬をじっくりご覧ください。仏師の個性が出るところではないかと思います。
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shishi-report-2.hatenablog.com
参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
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