びんずる尊者とは?
賓頭盧(びんずる)尊者は、お釈迦さまの弟子。
十六羅漢メンバーにも入っています(十六羅漢とは? - 釈迦が遺言を託した十六人の弟子 )。
日本では、「身体の悪いところに触れると治してくれる」という、なで仏としても有名。
親しみを込めて「おびんずるさん」などと呼ばれることも多いです。
びんずる尊者は神通力を持っていたとされますが、それを人前で見せびらかし、お釈迦様に怒られて追放された、というエピソードもあります(※後述)。
追放という形をとってはいますが、びんずる尊者は説法が上手だったので、お釈迦さまとしては「俗世に残って善行・布教を行いなさい」という意図だった、という考え方もあるようです(十六羅漢メンバーに入っていますので、この考え方はけっこう妥当な気がします)。
詳しい特徴を見ていきましょう。
広告- - - - - - - - - -
びんずる尊者像の特徴
摩耗したお姿
日本では「なで仏」として親しまれているため、全身が摩耗した状態であることが多いです。
素手で触れているだけなのに、こんなに研磨されていくんだ、と驚くばかりです。
とくに、目が悪い人が多いのか、目元が異常にくぼんでいたり、元の凹凸がわからないほど平らになっていたりします。
お堂の外に置かれることが多い
神通力を誇示して追放されたエピソードに影響され、びんずるさんのお像はお堂の中ではなく、お堂の外(外陣:げじん)に置かれることが多いです。
(※参考)
王舎城(古代インドのマガタ国の首都)のある長者が、木鉢を竿の先に吊して高く掲げ、「神通あるものはこれを取れ」といった。名だたる行者ら(六師外道)が試みるも徒労に終わった。これを大石の上で眺めていた賓頭盧は、同じ仏弟子の目犍連にそそのかされ、坐した大石とともに空中に躍り上がり王舎城の上を巡ったのち、やすやすと鉢を取って長者の家に下ったという。
この神通に長者は大喜びだったが、釈迦は「神通で凡俗の歓心を買うなど修行者のすべきことではない」と賓頭盧を戒めた。そして、「汝は我(釈迦)に随うことも涅槃に入ることもできぬ」とし、永く俗世にとどまり、世の大福田(善き行為の種を蒔く者)になるよう命じたという。
本田不二雄『ミステリーな仏像』(駒草出版・2017)p.136
びんずる尊者像の実例
コロナ禍では接触が禁止されている場合がございます。お寺の注意書きや指示に従ってください。
長野 善光寺 本堂外陣
いちばん有名なびんずるさんかもしれないですね。
写真がなかったので、似顔絵を描きましたが、実物はもっと深みのあるお姿です。
摩耗したお姿に一瞬びっくりするのですが、よく見ているうちに微笑んでいるようにも見えてきて、とても励まされるお像です。
「ここもお願いしなくちゃ」「私は腰ね」などと言いながらびんずるさんを撫でていく人々が皆笑顔なのを見て、ちょっと感動すらしてしまいました。
「与える(ギブ)」ってこういうことか、と。
奈良 東大寺 大仏殿の手前
東大寺のびんずるさんもかなり凄絶なお姿です。
一瞬怖く見えるかもしれませんが、人々に安心を与えてきたゆえのお姿で、決して恐ろしいお像ではありません。
奈良 矢田寺 本堂手前
赤いお身体だったのでしょうが、人々に撫でられて剥がれてきているのがわかります(とくに前面)。
お顔の彫りはわりとしっかり残ってらっしゃいますね。
合掌して数珠をかける姿です。
奈良 興福寺 南円堂の手前
興福寺南円堂の手前にいらっしゃいます。
赤いお身体をしているのは、「生命が充満して生命がみなぎっているさま」を表現しています(お像近くの貼り紙より)。
それにあやかる→徐病という流れですね。
網がかけられていますが、手が入るスペースが開けられていて、そこから撫でることができます(コロナ禍ではお控えください)。
広告- - - - - - - - - -
おわりに
一般的には触れることのできない仏像ですが、びんずるさんだけは特例。
現実的なことを言ってしまうと、触れるだけで病気などが治るわけではありませんが、安心感はいただけるので、それを力に変えていきたいですね。
他の仏像をさがす
☆一覧で表示>>>仏像の種類一覧
shishi-report-2.hatenablog.com
参考文献