大威徳明王(だいいとくみょうおう)とは?
「大威徳(だいいとく)」は大きな威力の徳性をもつ、の意。
大威徳明王は、水牛にまたがり、手・足・顔がそれぞれ6つずつあるという、特徴的なお姿をしています。
この6つの手と足と顔で世間にはびこる悪を抑え鎮める仏とされています。
阿弥陀如来が怒りの相に変身した姿とされます。
また、密教では文殊菩薩の化身ともいわれるようです。
水牛に乗っているので、農牛神とされることも。
また、悪を鎮める仏なので、戦勝祈願の本尊として祀られることも。
詳しい特徴を見ていきましょう。
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大威徳明王像の特徴
水牛にまたがっている
なぜ水牛かというと、水牛は陸でも、田んぼの泥水の中でも、ぐんぐん歩いていけるから。
この推進力をもって、地獄から天界まで自在に行き来できることを示しているのですね。
手・足・顔が6つずつある(六面六臂六足)
大き目のお顔が三面と、頭上に小さめのお顔が三面の、計六面。
6つのお顔それぞれに3つの目があるので、目は合計18!
世の中のあらゆるものが見えそうですね。
足が6本というのは、仏像にしては珍しいようです(六足尊とも呼ばれる)。
檀荼印(だんだいん)という印相を結ぶ
胸の前で手先を組み、中指だけ立てて合わせる「檀荼印」を結びます。
印相を結ぶ以外の手には、弓や剣や戟(げき)などの武器を持っています。
その他
忿怒相、光背がごうごうと燃えている(迦楼羅炎)、虎の皮の腰巻(虎皮裙:こひくん)などは降三世・軍荼利明王などと同じです。
大威徳明王像の実例
水牛にまたがっているので、座っている像が基本となります。
五大明王の一体として祀られることが多いですが、単独で祀られるケースもあるようです。
大分 真木大堂
大威徳明王としては日本最大のお像で、像高241 cm。
真木大堂公式サイト|所蔵仏像ご紹介(写真あります)
滋賀 石馬寺
水牛が片足を立て、今にも立ち上がろうとしているところが特徴的。
どんぐり眼で、どこかとぼけたような表情(水牛)もいい。
京都 東寺(救王護国寺)講堂
立体曼荼羅の五大明王部の一体。
そうそうたる顔ぶれの立体曼荼羅においても、水牛に乗った六面六臂六足の姿は目立ちます。
shishi-report-2.hatenablog.com
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おわりに
水牛にまたがり、6本の顔手足、という異形から、他の明王とも見分けがつきやすい大威徳明王。
どんなに足場の悪い場所にもやってきて、悪を倒してくれます。
もともとのサンスクリット語名は、ヒンドゥー教の神マヤを倒すものという意味があるそうで、「仏教はヒンドゥー教よりすごいんだぞ」ということを示したかったのでしょうね。
明王は全般的に、当時のインドにおいて「仏教の権威性を高める」という役割も担っていたのだろうと思います。
お釈迦様の説いた仏教とはすこしずつ形を変えつつ、発展してきたのだ、ということが実感できます(そもそも仏像というもの自体、お釈迦さまが亡くなってからだいぶ後に造られはじめたものですからね)。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
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