不動明王(ふどうみょうおう)とは?
日本では「お不動さん」の愛称で親しまれている不動明王。
燃えさかる炎を背負い、怖い顔をしていますね。
なぜ迫力あるお姿なのかというと、仏教の教えに背く人を導くため。
通常の伝え方では救えないので、怖い姿に変身して、仏教の教えを叩き込むというわけなんですね。
変身前のお姿は大日如来であるとされています。
詳しい特徴を見ていきましょう。
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不動明王の特徴
お顔の迫力がすごい
まず、明王の基本形である忿怒相(ふんぬそう:怒りの表情)をしています。
そればかりか、目や歯、髪型も特徴的です。
平安時代中期までとそれ以降で少し変わるので、分けて記載します。
【平安時代中期まで】
・両目をカッと見開いている
・直毛(総髪:そうはつ)+おさげ髪(弁髪:べんぱつ)を左に垂らしている
・口の両端に牙を出している(牙上下出:がじょうげしゅつ)
【平安中期以降】
・天地眼(右目を見開き、左目を半分とじる)
・巻き髪(沙髻:しゃけい)+おさげ髪(弁髪)
・下の歯で上唇を噛んでいる例もある
剣と羂索をもつことが多い
右手に剣、左手に羂索(けんさく:縄のこと)をもつのが一般的。
剣で煩悩や悪を打ち砕き、羂索でみんなもれなく救ってくれる、というわけですね。
光背がごうごうと燃えている
光背(こうはい)は、仏の身体から出る光を表現したもの。
不動明王の場合は、煩悩を焼き尽くすほどの燃えさかる火炎(迦楼羅炎:かるらえん)で表現されます。
二童子 or 八大童子を従える場合も
少年ような姿をしている、矜羯羅童子(こんがらどうじ)・制多迦童子(せいたかどうじ)が脇侍をつとめるケースがあります。
矜羯羅(こんがら)童子:蓮華をもつか、合掌(仏教に従順であることを表現)
制多迦(せいたか)童子:金剛棒をもつ
矜羯羅・制多迦に加え、慧光 (えこう) ・慧喜・阿耨多 (あのくだった)・指徳 (しとく) ・烏倶婆迦 (うぐばか) ・清浄 (しょうじょう) ・比丘の計8人チームを従える場合もあります。
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不動明王像の実例
立像(立っている像)
神奈川 浄楽寺
天才仏師・運慶が弟子とともに作った不動明王像です。
御開帳日もしくは予約で拝観できるようです。
三尊像(矜羯羅・制多迦コンビが脇侍)
静岡 願成就院
願成就院では、矜羯羅・制多迦コンビが不動明王とともに並ぶ三尊像が安置されています。こちらも、天才仏師・運慶による制作。
坐像(座っている像)
京都 醍醐寺
運慶と同時期に活躍した、天才仏師・快慶作の不動明王像。
私は、サントリー美術館で開催された「醍醐寺展」で拝観しました。
shishi-report-2.hatenablog.com
八大童子を従えている例
和歌山 高野山霊宝館
元は金剛峯寺の不動堂に祀られていた不動明王と八大童子。
八大童子は運慶チーム制作(※不動明王は違うようです)。
私は、以前東京国立博物館で開催された「運慶展」にて八大童子を拝観したのですが、ややぽっちゃり系でかわいらしいわ精巧だわで一気に大大大ファンになりました。
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おわりに
不動明王が日本にやってきたのは平安時代初期。
空海さんが密教とともに伝えたらしいです。
「〇〇不動尊」は各地にありますし、日本人にはなじみの深い仏ですね。
目黒(不動尊)・目白(不動尊)は地名にもなっています。
その一方で、インドではほとんど作例がなく、中国でも単独で祀られることはほぼないらしいです。
仏像に限りませんが、ある事柄が、土地や文化によって異なる広がり方をするのは実に興味深いなあ、と思います。
まずは近くのお不動さんに会いに行ってみてください。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
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