文殊菩薩(もんじゅぼさつ)とは?
「三人寄れば文殊の知恵」でおなじみの文殊菩薩。
知恵の象徴で、学業成就のご利益があると信仰されていますね。
文殊さんは、お釈迦様亡き後に生まれ、お経の編集や体系化を行ったという実在の人物です。
知恵の象徴になるなんて、さぞかし頭が良かったんでしょうね。
詳しい特徴をみていきましょう。
文殊菩薩の特徴
獅子に乗っていることが多い
なぜ獅子かというと、
・百獣の王ゆえ、知恵が堂々としている
・その強さで文殊菩薩を守る
ということらしいです。
獅子に乗っていないケースもあるので、獅子に乗る場合は、「文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)」と呼んだりもします。
持物(じもつ)も知的
煩悩を断ち切る剣
知恵を象徴する剣を持っています。
この剣で煩悩を断ち切ることができるんだとか。
蓮華に経典を乗せている場合も
悟りを象徴する蓮華を持ち、その蓮華の上に、絶妙なバランスで巻き物(経典)を乗せていることも。
蓮華を持つ仏像はけっこういるのですが、蓮華の上に巻き物を乗せるのは文殊菩薩だけなので、特徴的といえますね。
若者の姿・おだんごヘアスタイルが多い(密教系)
密教系では、「清浄な精神の象徴」として子供や若者の姿で表現され、頭上で複数のおだんご(※)を結っています。
※髻(もとどり:頭上で結った髪)といいます。
おだんごの数は、1つ(正式な数え方は髻(けい))、5つ、6つ、8つなどの髪型があり、それぞれ、一字、五字、六字、八字文殊菩薩と呼ばれます。
おだんご5つ(=五髻(ごけい))が多いようです。
ちなみに、おだんごの数によって意味が異なります。
一字:増益(福徳や利益を増す)
五字:愛敬(いつくしみうやまう)
六字:調伏(心身を制御・悪を排除)
八字:息災(災難をとめる)
釈迦如来像の脇侍をつとめる
文殊菩薩単体でも信仰されていますが、普賢菩薩(ふげんぼさつ)とともに釈迦如来の脇侍を務めています(この場合、三体まとめて「釈迦三尊像」と呼んだりします)。
従者を連れている場合も
文殊菩薩の説法を聞いている四人の従者を連れている場合もあります(四眷属:しけんぞく、と呼ぶことも)。
・仏陀波利三蔵(ぶっだはりさんぞう)
→博学のお坊さん
・善財童子(ぜんざいどうじ)
→道案内役、子供の姿
・優填王(うてんおう)
→獅子の手綱を持つ役目、古代インドの国王
・最勝老人(さいしょうろうじん)
→仏教に詳しいおじいさん
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文殊菩薩像の実例
単独で祀られる例
奈良 般若寺
般若寺の本堂にいらっしゃるは「八字文殊菩薩騎士像」。
獅子に乗り、若々しい姿で、頭上のお団子8つ、という「ザ・文殊菩薩」な仏像です。
慶派仏師作の仏像ゆえ、体表がなめらか、神々しいです。
★詳しい拝観レポートはこちら
shishi-report-2.hatenablog.com
維摩居士(ゆいまこじ)と対話している例
『維摩経』というお経には、維摩居士という仏教に詳しいおじいさんが登場します。
仏教の理解者・維摩さんと知恵の象徴・文殊菩薩さんが議論を交わす場面が有名です。
この場面に沿って、維摩居士と文殊菩薩が並んで配置される例もあります。
奈良 興福寺(こうふくじ)
興福寺東金堂では、薬師如来の両脇に文殊さんと維摩さんが並びます。
★(維摩さんメインの記事ですが、ご参考まで)
shishi-report-2.hatenablog.com
奈良 法華寺(ほっけじ)
法華寺の文殊さんと維摩さんは向き合う形(お堂の端と端)で配置されています。
shishi-report-2.hatenablog.com
四人の従者を連れている例
奈良 西大寺(さいだいじ)
西大寺の文殊菩薩はいかにも知的な表情が素敵です。
大きくて愛嬌ある獅子に乗り、従者(四眷属)も連れています。
★詳しい拝観レポート
(四従者は修復中だったため、文殊菩薩と獅子のみの感想です)
shishi-report-2.hatenablog.com
奈良 安倍文殊院(渡海文殊群像:とかいもんじゅぐんぞう)
文殊菩薩といえば安倍文殊院も有名。
安倍文殊院では、四脇侍は
・維摩居士(最勝老人)
・須菩提(仏陀波利三蔵)
・優填王
・善財童子
というメンバーになります。
文殊菩薩を含め、オール国宝の五人組(快慶作)。
東京国立博物館(※通年ではないです)
東京国立博物館の展示は定期的に入れ替わるため、お出かけ前に公式サイトの展示リスト(東京国立博物館 - 展示 本館)をご確認ください。
東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 文殊菩薩騎獅像および侍者立像(もんじゅぼさつきしぞうおよびじしゃりゅうぞう)
慶派仏師・康円(運慶の孫)の作です。
同じく慶派仏師の快慶作(安倍文殊院)と比較するのも興味深いですね。
★東京国立博物館で仏像を観る
shishi-report-2.hatenablog.com
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おわりに
四侍者を連れている例は比較的少ない気がしますが、文殊菩薩像自体は比較的いろんなお寺で拝観できると思います。
文殊菩薩の知的な表情にご注目ください。
文殊菩薩を乗せる獅子に仏師の個性が出る気がするのので、獅子チェックもお忘れなく。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
参照サイト
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