帝釈天(たいしゃくてん)とは?
帝釈天は、釈迦の全生涯(のうち重要な出来事)をすべて目撃した存在。
もともとは古代インドの天候の神(雷神とも)でしたが、のちに戦士の守護神に転じます。
仏教に取り入れられて、仏法の守護神となり、部下(四天王など)を私たちの住む世界に派遣し、様子をさぐらせ、不正や悪事を監視しています。
梵天とのコンビ名は「梵釈(ぼんしゃく)」で、釈迦如来の脇侍をつとめることもあります。
詳しい特徴を見ていきましょう。
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帝釈天の特徴
衣服の下に甲冑をつける(ことが多い)
「戦士の守護神」ゆえ、衣服の下に甲冑をまとっている場合があります。
梵天&帝釈天のコンビで並んでいたら、甲冑をつけているほうが帝釈天の可能性が高いです。
(※梵天のほうも甲冑をつけている場合もあり、また共につけない場合もあるので、参考程度にお考えください)
独鈷杵(とつこしょ)を持つ
独鈷杵(とつこしょ)という、煩悩を打ち砕く道具を持ちます。
独鈷杵は、金剛杵の一種で、別名「伐折羅(ばさら)」とも呼びます。
これは、帝釈天が古代インドの天候の神(印陀羅:インダラ)だったころに持っていた武器、ヴァジュラが原型で、元々は稲妻のこと。
密教以前:貴族風の立ち姿
密教が入ってくる前は、中国の貴族風の格好をしていました。
お顔一面に手が二本の、つまりは人間と同じお姿。
髪を高く結い上げ、貴族が着る礼服を着て、つま先が上に向いた革のくつ(高鼻沓)を履いています。
密教像:白象に乗る(こともある)
密教系の寺院のお像では、象に乗って片足を下ろしている姿で表わされることもあります。
(参考) 普賢菩薩との見分け方
白象に乗る仏像としては、他に普賢菩薩が挙げられます。
密教系の帝釈天(帝釈天騎象像)との違いは、次のポイントなどで見分けられるかなと思います。
・片足を下ろしているかどうか
→普賢菩薩は半跏趺座(はんかふざ)という座り方で、簡単にいえばあぐらスタイルです。一方、帝釈天は片足を下ろしています。
・持物(じもつ)で判断する
→普賢菩薩は合掌していることが多く、持物をもたないことが多いです。
一方、帝釈天は上で説明した「独鈷杵(とつこしょ)」という武器が特徴的です。
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帝釈天像の実例
立っている像(立像)
奈良 法隆寺
奈良時代の塑像(そぞう)。
梵天も帝釈天も、ともに衣服のしたに甲冑をつけるスタイル。
こちらの帝釈天、沓(くつ)を履いているのですが、破損した沓の下から、指を表した足が現れたのだそうです。
見えないところまでぬかりなく造形しているのですね。
(拝観レポート>>>【奈良】◆法隆寺【境内ガイド】- 日本最古の木造建築群)
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愛知 瀧山寺
運慶作の美仏です。
青色をベースにした、鎧や腰巻が美しい。
滝山寺・滝山東照宮|岡崎の観光スポット|岡崎おでかけナビ - 岡崎市観光協会公式サイト
象に座っている像
日本では、象に乗る姿の帝釈天(帝釈天騎象像)は作例が少ないようです。
京都 東寺 講堂 立体曼荼羅
東寺講堂の立体曼荼羅の帝釈天。
梵天とともに、「イケメン」と人気の高い仏像です 。
拝観レポ>>>【京都】東寺 講堂 - 21体の仏像が織り成す立体曼荼羅
shishi-report-2.hatenablog.com
番外編
東京 柴又帝釈天(題経寺)
寅さんでおなじみの、柴又帝釈天(寺名は題経寺)。
柴又帝釈天という通称が有名ですが、お寺としてのご本尊は大曼荼羅。
境内にある帝釈堂のご本尊は、板本尊であり(しかも通常非公開)、帝釈天像が拝観できるわけではないのですが、帝釈堂の説話彫刻が見事なので紹介します。
仏像や彫刻好きなら見ごたえあるのではないかと。
shishi-report-2.hatenablog.com
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おわりに
古代インドの天候の神様が、仏教に取り入れられて帝釈天となりました。
穏やかな表情ですが、衣服の下に甲冑を着ていたり、煩悩を破る武器を持っていたり、「戦士要素」が盛り込まれています。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)