仏像、ときどきワンダー観光

おもに仏像のこと。不思議スポットやふつうの観光の話もたまにします

【仏像】秋篠寺 大元堂 - 恐ろしい姿でありながらどこか親しみも覚えてしまう大元帥明王像

秋篠寺 大元堂

秋篠寺の大元堂と大元帥明王


毎年6月6日のみ開扉となる大元堂。
国を守り、外的を退避させるという、大元帥明王(たいげんみょうおう)像が安置されています。

(参考>>>大元帥明王とは? - 国を守り、外敵を退散させる明王

2022年は雨&平日だったおかげで、待たずにお堂にお邪魔できました。

感染防止のため、お堂内にあまり長く留まることはできず、ウォークスルー方式(一方通行)でした。
(運よく空いていた時間帯だったので、二周させてもらいました)

広告- - - - - - - - - -

 



(参考)なぜ秋篠寺に大元帥明王?

大元帥明王へのご祈祷は、極秘の行事だったので、大元帥明王のお像をつくったり、仏画を描くことは禁じられていました。

実際、像例はほとんどありません。

ではなぜ、秋篠寺には大元帥明王がおられるのか、というと。
最初に大元帥明王が姿を現したとされる場所だからなんですね。

かつて、常暁(じょうぎょう)というお坊さんが、秋篠寺の井戸(現在の香水閣)で、水面に映る自分の姿を眺めていたところ。

自分の後ろに、ものすごく大きくて怖い顔をしている存在が重なるのを目撃。
非常に不思議に思って、その姿をスケッチし、身に着けていたそうです。

後日、常暁さんは、唐に留学するのですが、そのときに大元帥明王の存在を知り、「秋篠寺の井戸に表れたのはこの方だ!」と知り、日本に修法(御祈祷)を持ち帰ったという伝説があります。

だから、秋篠寺の井戸のお水は、朝廷での御祈祷(大元帥御修法)のときに献上されてきたわけなんですね。

(参考:『秋篠寺小誌・尊像略記』)

大元帥明王(たいげんみょうおう)像に会う

お堂前に置かれていたお写真

大元帥明王像の正面、すぐ近くまで行くことができました。
大きくて真っ黒なお身体に圧倒されました。
鎌倉時代のお像と推定されています。

髪を逆立てた忿怒相

外的を退避させるほどのパワーを持っているので、髪を逆立て、忿怒相(怒った顔)をしておられます。

輪郭もガッシリしていますが、目も鼻も口も大きい!

でも、忿怒相とはいえ、なんだか親しみのあるお顔なのですよ、不思議と。
塗りが剥がれている影響なのか、黒目がちに見えて、ちょっとかわいいとさえ思ってしまう。

腕が6本

強そうな腕は六本(一面六臂)。
それぞれの手に、三鈷杵(さんこしょ)、五鈷杵(ごこしょ)、斧、剣、宝棒をお持ちです。

三鈷杵と五鈷杵は、いわゆる「金綱杵(こんごうしょ)」で、困難なものごとを成し遂げるためのシンボル。

五鈷杵

 

斧や剣といった武器は、煩悩を破るためのもの。

斧
剣
煩悩を破るための武器


武器などを持たない左手は、人差し指を天に向けてまっすぐに立てています。

ヘビを巻き付けている

首、手首、腕、腰、いろんなところにヘビを巻きつけています。
ヘビにも動きが感じられて、リアルです。

足腰大事!

全体的にガッシリどっしりのフォルムですが、足腰の強さは相当なもの。

一般に仏像は(どこにでも救いの手を伸ばせるように)上半身を長めに表現されることが多いのですが、大元帥明王像もまた、ショートレッグのスタイル。
これにより、足腰の安定感が増しています。

ふくらはぎは太く、ひざのお皿の大きくて頑丈そうなこと。

「足腰大事!!」と叱咤激励さていれるような気がしてきて、「歳をとっても自分の足でどこへでも行けるように、筋トレしよう」などと思ったのでした。

広告- - - - - - - - - -

 



おわりに

存在自体が珍しく、しかも年1回の御開帳ということで、大元帥明王を拝めたのは幸運だったと思います。

お像から感じるパワーや温かみ、とても元気をもらいました。
仏像好きの方にはぜひご覧いただきたいお像です。

雨&平日で空いていたのもラッキーでした。

秋篠寺 全体案内へ>>>◆秋篠寺【境内案内】- 日本で唯一の伎芸天像に会える、苔の美しいお寺