般若寺では、春(4月29日~5月10日)と秋(9月20日~11月10日)に、秘仏が公開されます。
(公開日程など、変更の可能性もありますので、お出かけの際は公式ウェブサイトをご確認ください)
般若寺 宝蔵院
秘仏を拝観できるのは、般若寺境内北側にある宝蔵院。
こちらの門をくぐって左手に建物の入口があります。
入口には銅鑼(?)が置かれ、「拝観される方は鳴らしてください」的なことが書いてありました。
鳴らしてみると、「はーい」と、感じの良い声と共に厳かに開く扉!
一瞬自動ドアかと思ったのですが、中から受付の方が手動で開けてくれるしくみ(こういう、素朴なおもてなし的心遣いがあたたかい)。
受付にて200円を納めました。
展示について簡単に説明してくださいます。
秘仏白鳳阿弥陀如来立像と胎内仏三尊
聖武天皇が十三重石宝塔を建てた当時に、塔に奉納された阿弥陀如来。
聖武天皇のひいおばあさんにあたる持統天皇の念持仏(身近に置いて礼拝するための仏像)だったのではないか、とのこと。
昭和39年の大修理のときに、塔の五重目から発見されたそうです。
800年もの間、あの石宝塔内にいらっしゃったんですね。
石宝塔に守られていたからでしょうか、状態がとても良好です。
(残念ながら金の鍍金(めっきのこと)ははがれてしまっていますが)
まず目につくのは手の大きさ。
親指の付け根がとてもふっくらしています。
頭も大きいので、なんとなくかわいらしいフォルム。
女性の念持仏だったというのも納得がいきます。
衣文に施された複連点紋も見事。
さらに驚いたのは、この白鳳阿弥陀如来さんの台座のなかから、3体の仏像が発見されたこと。
念持仏ゆえ小さめのお像なのですが、さらに3体も内包しているなんて!
実物を拝観しましたが、とても小さいです(地蔵菩薩 9.8 cm、大日如来 5.2cm、十一面観世音菩薩 11.8 cm ※いずれも台座も含めた総高)。
とくに大日如来さんの小ささといったら!
キーホルダーとかストラップについていそうなほど小さい。
なのに! ものすごく精巧なのです。
どうやったらこんなに小さいものを、こんなに精巧に彫れるのでしょうか。
彫刻を習っていたことがあるのですが、小さいものを彫ろうとすると必ず手を切ってしまっていました。
きわめて簡単な構造物でもむちゃくちゃ難しかったので、もはや想像がつきません。
まぁ、その時代の「天才」と呼ばれる人が彫ったのでしょうから、素人が難しさを想像するのはナンセンスかもしれませんが。
どんな職種であれ「良い仕事」は時空を超えて、人を感動させることができるのだなあ、と思います。
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他の宝物も非常に魅力的
白鳳阿弥陀如来と胎内仏三尊が宝蔵院のメインではありますが、横のほうにサラッと展示してあるものも結構興味深いです。
焼けあみだ
平安時代に造られたお像。
かつて境内に存在した阿弥陀堂のご本尊だったのでは、とのこと。
たびたびの火災で一部焼損しているものの、お身体は残りました。
こういう、ピンチを逃れてきた系の仏像(まあ、古い仏像はすべて、何らかの危機をかいくぐってきているのですけど)って、強運な感じがして良いですよね。
エピソードを知ると親しみもわきますしね。
我々人間とて、長く生きていればいろんなことがあり、それなりに苦労してつつ生き抜いているわけですから、多かれ少なかれ共感を覚えるのかな。
ホルマリン漬けの四天王
痛みがひどいため、ホルマリン漬けになっている四天王も展示されていました。
ほぼ粉々、というレベルまで痛んでしてまっている部分もありましたが、胴体など、はっきりと「四天王」とわかるほど残っている箇所もありました。
予算の都合?でしょうか、今は修理ができないとのこと。
修復するにしろ、結構大変そうだなあという感じがしました(あくまで素人的な見た目ですが)。
修復されたお姿を拝見するのを楽しみにしています。
最勝老人の手と優填王の剣
かつて般若寺には、巨大な文殊菩薩騎獅像とお付きの四従者(たぶん)がおられました。
たびたびの火災で焼失してしまいましたが、最勝老人(さいしょうろうじん)の手首と、優填王(うてんおう)の太刀は残っていて、宝蔵院に展示されています(宝蔵院に入って左手のスペースです)。
最勝老人の手は、血管が浮き、爪が尖っていて、まさに「何か不思議な力のある老人」を思わせるものでした。
手だけでも意志を感じるような、リアリティがあります。
優填王の太刀はその長さにも驚きますが、重量感を感じる造形。
全体像を想像せずにはおれませんでした。
(見たかったなあ……焼けてしまってるので仕方ないですが)
余談
完全に余談で、仏像など関係ないお話です。
宝蔵院に入った瞬間、頭上から「ブーン」という羽音が。
首を捻じ曲げて見上げると、それはもう、大きな大きな蜂が!!
セミが二匹くっついたくらいの大きさなんです(誇張ではありません! 検索してみたところ、オオスズメバチだったのではないかと)。
幸い、11月ということもあってかおとなしく、攻撃してくる気配もなかったのですが……念のため受付の方にお伝えし、適切に対応していただきました。
それにしてもあの大きさには驚きましたね。
お寺は自然が残っているところが多いですし、できる限り殺生はしない方針でしょうから、蜂をはじめ、いろんな虫がいますよね。
念のため、夏から秋の参拝時は、(蜂が攻撃してきやすい)黒っぽい服装を避けることをおすすめします。
あと、夏場は蚊も多そうなので、虫よけ対策も忘れずに。
(お寺に限らず、自然の多いところに行く場合全般にいえることですが)
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