仏像、ときどきワンダー観光

おもに仏像のこと。不思議スポットやふつうの観光の話もたまにします

【奈良】法華寺 - 十一面観音はもちろん、維摩居士像(国宝)や横笛像も見逃せない

法華寺(ほっけじ)

法華寺は天平時代から1250年以上続く尼寺。
元は光明皇后のお住まいだったそうです(門跡寺院といいます)。

その後、総国分尼寺(ちなみに総国分寺は東大寺)となり、さらにその後「法華滅罪之寺」となったそうです。

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法華寺 南大門

「法華滅罪之寺」って、名前がすごいですよね……。
罪を滅ぼす寺ですから。

まあ、昔の女性で出家する人って、ものすごい壮絶な人生を歩んでいそうな気はしますから、なんとなく納得ではありますが。

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こちらの門から入ります

こちらの門をくぐるとすぐ受付がありますので、そちらで拝観料を支払います。
拝観料などは公式サイトをご覧ください>>>光明宗 法華寺

本堂

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本堂

早速ですが、靴を脱いで本堂へ。
おおかたの配尊図を作ってみました(勘違いや記憶違いもあると思いますので、あくまでご参考程度にお考えください)。

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本堂 配置図

特に印象に残った仏像について簡単に感想を記しておきます。

十一面観音立像(分身像)

ご本尊の十一面観音立像(国宝)は普段は非公開。
今回は残念ながら厨子の扉が閉じられていました。
(2019年10月25日~11月14日、2020年3月20日~4月7日は公開となるそうです。)

通常拝観できるのは、ご本尊の隣の厨子におられる分身像。
分身像とはいえ、ご本尊の雰囲気を十分に感じ取れます。

特徴的なのは光背でしょうか。
蓮の葉とつぼみが交互に並んでいます。
蓮の葉はくるりと丸まっていて円筒状になっているのですが、一枚一枚丸まり方が違っています。
にも関わらず、全体的にバランスがとれていて見事です。

ターコイズブルーのような色調の御髪もきれいですよね。

維摩居士(ゆいまこじ)像

維摩さんは、在家の(出家していない)仏教徒ですが、仏教を知り尽くしており、また弁舌に優れたお方。

あまりに鋭いことをおっしゃるので、維摩さんが病に伏したとき、だれもお見舞いに行きたがらず、文殊菩薩さんが行くことになったほどです。
そこで維摩さんと文殊菩薩さんが対話するシーンは有名ですね(維摩経)。

(100分de名著の『維摩経』は読みやすいです)

『維摩経』 2017年6月 (100分 de 名著)

『維摩経』 2017年6月 (100分 de 名著)

 

 


法華寺を拝観するなら、この維摩居士像(国宝)も欠かせません。

法華寺本堂の入口を入ってすぐ、左手のスペースにいらっしゃいます。
(入口すぐなので、気をつけないと見逃します)

横顔の写真が有名なので、正面から拝観すると「あれっ、こんなお顔だったかな」とちょっと戸惑いました(>>>法華寺公式ホームページ)。

(このサイトの写真が大きくていいです。

法華寺|奈良県観光[公式サイト] あをによし なら旅ネット|奈良市|奈良エリア|神社・仏閣|神社・仏閣

興福寺の維摩居士像はかなり厳しいお顔ですが、法華寺の維摩さんは多少穏やかな感じ。
お顔のシワも少なく、壮年な印象でした。
本堂内の説明アナウンスによると、シワに頼らず、前かがみの姿勢などで病床にあることを表しているのだとか。

蓮の葉をくしゃっとしたような形の(→個人の感想)、特徴的な帽子をかぶっておられるのは興福寺の維摩さんと共通でしたね。

(参考記事)

shishi-report-2.hatenablog.com

 

公式サイトによると、こんな伝説があるそうです。

維摩会(ゆいまえ)の会場(えじょう)が法華寺から興福寺に移ったのち、興福寺を懐かしんで像が自ら南東を向いたという伝説が残されています。

引用元:https://hokkejimonzeki.or.jp/about/treasure/

 

この伝説について、「いやいや、仏像は動かないよ」と思った方もいらっしゃるでしょうが、私は「ありえるな」とも思ってしまいます。

といいますのも、こんな経験がありまして。
子どもの頃、お雛様を飾ってもらったことがある(親が面倒くさがりで、何年かに一度でしたが)のですが。
飾って数日、お内裏さまとお雛さまが互いにそっぽを向いていることに気づきました。
最初は「誰か触ったのかな」とか「何かの拍子に当たっちゃったかな」と思って、首の向きを直したんです。

が!! しばらくしてまた見ると、お互いのそっぽを向いているではありませんか!
何度直しても、しばらくするとそっぽを向くのです。
私は一人っ子なので、他の兄弟姉妹が勝手に触ったりなんてこともありません。

母が「うちは夫婦仲悪いから、それを象徴しているみたいだ」とポツリと言ったのですが、妙に納得感があったのでした。

理屈で考えれば、おそらく湿気などで木材が膨らんだり縮んだりして、首と胴体の関係性が変化したのでしょうから、オカルト的なことではないと思います。

そうだとしても、お互いのほうを向かずにそっぽを向く、というのがやけに我が家の状況とリンクしていて、「不思議な偶然もあるもんだなぁ」と当時思ったのでした。 

なので、法華寺の維摩居士像が「像自ら南東を向いた」というのもありそうな気がします。
(伝説について、勘違いしている部分がありましたので、公式サイトに基づいて修正いたしました。2021/6/10)

文殊菩薩騎獅像

維摩さんと向かい合うように、本堂の右端(東側)におられるのが文殊菩薩さん。

文殊菩薩を乗せている獅子はわりと素朴な感じでした(表面まで精緻に、という感じではなく、あらぼり感あり)。

文殊菩薩と獅子の色味(木材も?)が結構違うので、もしかすると作成年代が違うのかな、なんて思ったりしたのですが(詳細は確認できず)。

横笛像

平家物語第10巻に登場する横笛(よこぶえ)さんという女性。
平清盛の娘に仕える雑仕女だったそうです。

平重盛の家臣、齋藤時頼と恋に落ちるのですが、身分の違いから時頼のお父さんが大反対。
悩んだ時頼は出家します。

時頼に一目会いたいと横笛さんはボロボロになりながら時頼のいる寺を訪れるのですが、時頼は同宿の僧に頼んで帰るように伝えます(この後時頼は女人禁制の高野山へ)。

失意の横笛さん、その後法華寺にたどり着き、出家。
という背景があったそうです。

(詳しく知りたい方はこちらのページがわかりやすいです。図書館司書の方の文献紹介です。)

http://www.kufs.ac.jp/toshokan/bibl/bibl189/pdf/18933.pdf



本堂には尼さんとなった横笛の彫像が置かれていました。

小さくて、前かがみの姿勢、表情もなんとなく悲しげです(横笛像を観たときは上記逸話は知らなかったのですが、それでもなんだか悲しいような切ないような印象を受けました)。

(事実確認はできなかったのですが)この横笛像、時頼とやり取りした和歌の紙で横笛さんご本人が作ったのだとか。
(※インターネットの情報です。横笛像の背後に説明書き的な板があったのですが、崩し文字で読むのが難しそうだったのでスルーしてしまいました。ちゃんと読んでおけばよかった!)

境内にある横笛堂は、以前は門の外にあったようですが、境内に移築されたもの。
以前は横笛像が安置されていたので、横笛堂と呼ばれているそうです。

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横笛堂

 

その他の境内の様子

浴室(からふろ)

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浴室と井戸

現代でいうところの「サウナ」だそうです。

浴室(からふろ)の隣にあるのは大きな井戸。
ここから水を供給していたんですね。

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井戸

法華寺の浴室は、光明皇后の願いにより、庶民のための施設だったそうです。

光月亭

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光月亭

こちらは、もともと庄屋のお宅だった建物を月ヶ瀬村から昭和40年に移築したらしいです。
建物は18世紀中ごろのものらしいです。
法華寺と関係あるというよりは、その貴重性を重んじて、ということでしょうかね。

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光月亭 内部

 

華樂園

境内の東側にあるお庭(西側の名勝庭園とは別ものです)。
意外と広くて驚きました。

隅々まで手を入れこんでいる、というよりは、比較的自然な形で草花を存在させているという感じ。素朴というか。

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華樂園

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蓮はもう枯れつつありました。
タイミングが悪く、「ちょうど見ごろ」という草花がなく(汗)

調べて行ったほうがいいいですね。
ツバキや法華寺蓮の時期はとてもきれいだろうなと思いました。

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ベンチ

ちょっと休める場所もけっこうありました。
(草花が豊富で虫がブンブンしていますので、ゆっくりしていたら蚊に刺されそうでしたが)

尼寺だからでしょうか(実際お見かけした僧侶も女性の方でした)、ベンチや椅子もなんだかかわいらしいものが多くて、ほっこりしました。

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句碑

橋本多佳子さんの句碑。
「古雛 をみなの道を いつくしき」

橋本多佳子さんは、女性の悲しみや不安、自我を表現した方らしいです。

その他の写真

受付を済ませると目に入るのが鐘楼。
高さがあって、優美な印象です。

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鐘楼

 こちらは護摩堂です。

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護摩堂

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薬師堂

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遺構 発掘調査中

境内は一部発掘調査中でした。
このへんが奈良っぽいですね。

アクセス

近鉄新大宮駅(近鉄奈良駅からひと駅)から徒歩17分。

私はJR奈良駅から歩きましたが、まあまあかかる(40分弱)ので、奈良駅からであればバスがおすすめ。

 

おわりに

秋の正倉院展に合わせて、法華寺や海龍王寺の秘仏も公開となります。

奈良公園や東大寺からは少し遠いですが、電車やバスを使えば負担にならない程度ですので、合わせてご覧になってはいかがでしょうか。

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