仏像、ときどきワンダー観光

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【奈良国立博物館】2021年正倉院展 - 奈良時代の事務作業に思いを馳せる

2021年10月30日~11月15日に奈良国立博物館にて開催の第73回正倉院展の観覧レポートです。

正倉院展と書かれた看板

第73回 正倉院展

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入館までの様子

新型コロナウイルスの影響により、2021年も観覧人数制限を行っての開催となりました。

当日券はありません

入場開始時刻の10分前から並ぶことが可能ですが、その時間帯は入館待ちの長い行列ができますので、混雑を避けたい方はご注意を。

私は今年も、30分程度後ろにずらして会場入りしました(例:10時~11時入場のチケットであれば、11時半ごろに会場入り)。

入場時間を少しずらすのがスムーズでおすすめ


そのおかげで、一切並ばずに入館できました。
西新館の横で係の人にチケットを見せ(ここでは見せるだけ)、検温(おでこにピッ)をし、入口に向かいます。

一切並ばずに入館できた

※ 会場内、比較的混雑していますので、大きな荷物がある方は先に外のロッカーに預けるのをお忘れなく。

白いテントが張ってある

ロッカー

 

(参考)2021年 会期初日 18時頃の列の様子

ちなみに、会期初日18時ちょうど頃の、入館待ちの列の様子です。

会期初日の18時頃、入館待ちの列

18時~(※金土日祝のみ)は最終の入場時間帯だからかもしれませんが、かなり並んでおられました(とはいえ、金土日祝は19時まで入館可能、20時まで観覧できますので、焦って早く並ばなくても大丈夫です)。

地図でいうと、列はちょうど下記地図のオレンジ色の線あたりまで伸びていました。

会期初日18時頃、入館待ちの列(オレンジ線)

気温が低い日は寒いと思いますし、入館してからもしばらくは混雑が続きますので、入場時間をずらすとスムーズかと思われます。

(2022年のチケット情報>>>〈2022版チケット予約・発券方法〉2022年秋の正倉院展は10月29日~11月14日(予定)

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さて入館

館内の幕

 

建物への入館時にチケットをもぎってもらい、アルコール消毒を済ませます。
音声案内や、出陳一覧(リスト)などを装備し、いよいよ観覧エリアへ(以降、撮影禁止)。 

実際の館内の混雑具合

あくまで私の感覚ですが、昨年よりも混雑しているような気がしました。
(コロナ禍で密を避ける暮らしに慣れすぎてしまったせいかもしれません)

基本的には、少し並ばないとお目当ての展示物をじっくりとは見られないような感じで、後ろのほうからつま先立ちで見学するような場面もありました。

「久々に人がいっぱいいるところに来たぞ」という感覚は、「世の中がすこし落ち着いてきつつあるのだな」という安堵感とともに、「人がたくさんいるところにいると、こんなに疲れたっけ?」という思いももたらしました。

あと、他に遊ぶ場所がまだ少ないからなのかもしれませんが、子どもさん連れのファミリーが例年より多かった気がします
(館内ソファでぐったりする子どもさんを見て、「1200年前のアンティークはちょっとまだ退屈だろうな」とおせっかいながらも気の毒に思いました。親御さんがた、じっくり観たい気持ちは本当に本当によくわかるのですが、子どもさんが疲れていないかにもどうか気をつけてあげてください)。

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印象に残った宝物

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2021年 正倉院展みどころ(「奈良国立博物館だより第119号」より引用)



2匹のインコに注目! 螺鈿紫檀阮咸(らでんしだんのげんかん)

新聞に記載された丸い胴の楽器

螺鈿紫檀阮咸(らでんしだんのげんかん)読売新聞「第73回正倉院展特別版」より引用


螺鈿(らでん)細工を施した絃楽器。
胴部が円形なのもかわいい。
聖武天皇の遺愛品だそうです。

この楽器を見ていて驚いたのは、背面のらでん細工の美しさ。
二匹のインコが表現されていますが、リアルさもあり、かわいらしさもあり、美しかったです(写真よりはるかに実物がいいです)。

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二匹のインコに注目(読売新聞より引用)

一枚ずつじっくり見たい 蓮華の形の香台 漆金薄絵盤(うるしきんばくえのばん)

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漆金薄絵盤(「奈良国立博物館だより119号」より引用)


仏教の法要のときに、この蓮華の台の中央にお香をのせて使う、仏具です。

今回の展示物のなかで、最も派手で鮮やかで目をひくのではないかと思います。

蓮の花びら32枚がのびのびと咲き誇るような形の造形で、躍動感もあります。

花びら一枚一枚には、花や鳥、極楽浄土の生き物などが描かれているのですが、「1200年前にこんなにも鮮やかな着色材料があったのか!」と思わずにはいられないような発色でした。

奈良時代の事務作業の様子が想像できる、文房具類

今回の正倉院展の特徴の一つが、奈良時代の文房具類がまとめて出陳されること。

実は、あまり興味を感じていなかったのですが、実物を見ていると、奈良時代の下級役人たちの仕事ぶりが想像できるような感じがしてきて、一気に興味がわいてきました。

奈良時代の筆

筆 動物の毛と紙を巻いている構造(「奈良国立博物館だより119号」より引用)


私たちが想像するふさふさした筆とは違い、動物の毛と紙を交互に巻いたものが使われていたようです。

実物を見ると、筆先部分は、まさに「紙を巻いたもの」という感じでした。

(ちょっと細かい部分は記憶が定かでないのですが)正式書類?を書くときは「ウサギの毛」、お経などの冊子の題字を書くときは「狸の毛」みたいに、ざっくり使い分けもしていたもよう。

そのままつけられるキャップも付属していて、当時の人々の工夫が感じられました。

奈良時代のアームカバー、白絁腕貫(しろあしぎぬのうでぬき)

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奈良時代のアームカバー(「奈良国立博物館だより119号」より引用)

筆で書き物をするとき、墨で袖が汚れるので、アームカバーをしていたわけですね。

現在のアームカバーといえば、口のところにゴムが入っているのが一般的ですが、当時はゴムのような材料がなかったので、両手分をひもでつないでいるのでしょうね。

東大寺の写経所などで、写経師をしていた「高市老人」という人が実際に使用していたものだそうです。

この方、仮病でずる休みして怒られたことがあることまで、記録に残っているんだとか(「奈良国立博物館だより119号」を参考)。
昔の人も今とそんなに変わらないのだなあ、となんだか嬉しくなりました。

袖口がとくに擦り切れているので、かなり使い込んだのでしょうね。

私も子どもの頃、お習字を習っていたのですが、おじいちゃん先生が黒っぽいアームカバーをなさっていたことを思い出して、とてもとても懐かしくなりました。

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正倉院展 グッズ

今年も、Tシャツ、てぬぐい、バッグ、クリアファイル等、ミュージアム系の定番グッズはひととおり揃っていました。

琵琶などの楽器をモチーフにしたグッズが多いですね。

昨年も売っていた正倉院文様のオリジナルマスク(使い捨て、4枚入り)もありました。

正倉院模様がプリントされたマスクの画像

正倉院展 グッズ 使い捨てマスク

今年は別の柄のマスクもあり、そちらも素敵でした。
詳細は>>>奈良国立博物館ミュージアムショップ



また、ここ以外にも、地下のミュージアムショップ(常設)もありますので、そちらをのぞいてみられてもいいかも。
>>>【奈良国立博物館】地下回廊 - 観覧後にほっと一息できるエリア

 

(参考)外にも特設ショップ「天平」があります

外にも特設ショップが出ていました(館外なので、チケットがない方でもお買い物できます)。

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中川政七×正倉院展 特設ショップ

こちらのほうが若い方などは好きな感じなのかな、と思います。

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中川政七×正倉院 グッズ

中川政七商店とのコラボグッズもあります。

正倉院宝物のアクリルキーホルダーはガチャガチャ形式。
こういうのは、うっかりコンプリートしてしまいそうになるのですが、なんとか耐えました。

詳しくは>>>ミュージアムグッズオンラインストア

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お時間あれば、なら仏像館もどうぞ

前売りチケットを持っていると、なら仏像館が割引料金(通常一般700円のところを200円)で観覧できます。

現在、金峯山寺の仁王様が仮住まい中です。
ものすごい迫力なので、おすすめです。

shishi-report-2.hatenablog.com


ファンが勝手につづる、奈良博の総合ガイドはこちら

shishi-report-2.hatenablog.com

 

おわりに

2021年の陳列物のポイント(※個人の感想)は
螺鈿細工のインコがかわいい楽器、螺鈿紫檀阮咸(らでんしだんのげんかん)
鮮やかでずっと見ていられる蓮華の香台、漆金薄絵盤(うるしきんばくえのばん)
・奈良時代の事務作業の様子が立ち上ってくる、文房具類

過去の正倉院展の観覧レポート

shishi-report-2.hatenablog.com

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2022年の情報

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