仏像、ときどきワンダー観光

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【奈良】東大寺 法華堂の仏像たち - オール国宝&3~4メートルの迫力あるお姿

東大寺法華堂の仏像たち

 

 本記事は、東大寺法華堂(三月堂)に安置されている仏像について、詳しく紹介しています。

東大寺の記事一覧はこちら
法華堂の建物や落書きについては>>> 法華堂(三月堂)- 1000日絶やさずお花を供えた記録が残る、東大寺最古のお堂 

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東大寺 法華堂の仏像

内陣配置図

東大寺法華堂の配尊図

配尊図 (法華堂パンフレットより引用)


不空羂索観音を中心に、両隣に梵天&帝釈天、お堂の四方を四天王が囲む配置となっています。
持国天と増長天の間に金剛力士コンビが立っている形式は少し珍しいかもしれません。
さらに、不空羂索観音の後方には、秘仏の執金剛神(しゅこんごうしん)。 

注目ポイント

奈良時代の乾漆像は貴重

乾漆(かんしつ)という古い技法で造られています(※秘仏の執金剛神のみ塑造)。

どういう手順かといいますと、まず、粘土で型をつくり、その上に麻の布を漆で塗り固め(十数回)ながら、形を作っていきます。

乾漆像は、漆が高価&手間がかかるため、日本では作例が少ないそうで、7~9世紀以以外の時代にはほとんどないようです。

どのお像も3~4メートルあり、迫力がすごい

秘仏の執金剛神を除く9体は、3~4メートルスケールのお像。
大仏殿参拝後だとちょっと感覚がマヒしているかもしれませんが、一般的な仏像からすると、かなり大きいお像ばかりなので、迫力があります。

個人的に一番印象に残ったのは髪を逆立てヒゲもたくましい金剛力士立像(阿形)

作例が比較的少ない不空羂索観音もみどころなのですが、一番インパクトがあったのは、金剛力士のうちの阿形(口を開けているほう)。
詳細は後述します。

それでは、各お像についての感想を詳しく書いていきます。

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各仏像について

不空羂索観音菩薩(ふくうけんさくかんのんぼさつ)像

東大寺の不空羂索観音が写っているパンフレットの画像

法華堂パンフレットより引用(元の写真:三好和義氏による)

不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)は、羂索(けんさく、けんじゃく、とも)という投げ縄であらゆる人を救ってくれる仏(詳しくは>>>不空羂索観音とは?)。

362cmもあり、また光背も豪華なので、堂々たる存在感。
とくに光背の透かし彫りがとても美しく、印象的でした。

合掌している手の間には、水晶の珠を保持しているのだとか(そこまで確認できず)。

梵天&帝釈天

ご本尊の左右の梵釈コンビ。
いずれも約4メートルの大きなお像。
お顔の着色の赤が残っているため、お堂内でも目立ちます。

一般的には、衣類の下に甲冑をつけているほうが「帝釈天」なのですが、東大寺法華堂は逆として伝わっているようです(一般に「梵天」とされる方が甲冑をつけている)。

梵天と帝釈天とで像容が似てはいますが、表情には個性がありました。
とくに帝釈天のほうは、こちらを全て見透かしているような目をしていて、「わ、私、何も悪いことしてないよね」と自身を振り返らずにはおれないような雰囲気を感じました。

この、「すべてを知っていそうな目」でたくさんの人々を導いてきたのでしょうね。

金剛力士立像(阿形・吽形)

東大寺法華堂パンフレットの金剛力士像の部分を撮影した画像

金剛力士立像(吽形) 法華堂パンフレットより引用

上の写真は金剛力士の吽形(口を閉じているほう)。
ぱっと見は、武将系の四天王にも近いようにも感じますが、手に金剛杵(煩悩を破るアイテム)を持っているので、金剛力士とわかります。
こちらはまあ、スタンダードな金剛力士寄りかな、と。

驚いたのが阿形(口を開けているほう)。
髪が逆立っている(明王などによくみられる髪型です)&たくましい口ひげ。

法華堂金剛力士立像(阿形)のイメージを描いたイラスト

法華堂金剛力士立像(阿形)のイメージ

(イメージを描いてみましたが、正直全然似ていないです、、、髪型やひげなどの特徴をつかんでいただくのが主旨、ということで)。

仏像のひげといえば、せいぜい「ちょろん」とした感じの上品なもので、ワイルドにひげをたくわえている例は少ないと思います。

実際のお像を観ると、ひげの質感といいますか、いろんな方向に毛が向いている感じなどもリアルで、写実性に優れていると思いました。

口の開け方も、「今まさに敵に向かって叫んでいる」ような、時が止まったかのような造形。

お顔全体の雰囲気として、「どこかの外国(インドっぽくはあるのですが、インドでもないような)に実在しそうな格闘家」という印象で、とてもリアルでした。

四天王(してんのう)

東大寺法華堂のパンフレットの持国天の部分を撮影した画像

四天王のうち持国天(法華堂パンフレットより引用)

お堂の四隅を守る四天王。
お堂に入った瞬間、上の写真の持国天に見おろされて「うわあわわ」となりました。身体に厚みもあって、圧倒されました。

手前の持国天&増長天は、眉間にしわを寄せる厳しいお顔ですが、奥の広目天&多聞天は比較的冷静な表情。
広目天は黒目がちで、ちょっとキョトンとしているようにも見えました。
多聞天は「すん」とした、静かな印象でした。

執金剛神(しゅこんごうしん)※秘仏のため通常は拝観不可

東大寺法華堂パンフレットの執金剛神の部分を撮影した画像

執金剛神(法華堂パンフレットより引用)

不空羂索観音の後方におられる執金剛神。
像高は170 cm程度、と法華堂の他のお像に比べると小さいですね(日本人男性の平均身長くらいでしょうか)。
秘仏のため、開扉日(12月16日)以外はお姿を拝見できません。

ちなみに、執金剛神とは、金剛力士が単独で祀られるときのお名前です。

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おわりに

東大寺は大仏殿だけでも見ごたえがありますし、さらに東大寺ミュージアムもありますし、境内東側の法華堂まではなかなか行く機会がないかもしれません。

ですが、仏像好きの方には法華堂がとてもとてもおすすめです。

個人的には、「大仏殿+東大寺ミュージアム」の組み合わせは見るものがありすぎて疲れるので、「大仏殿+法華堂」の組み合わせのほうがおすすめかな、と。

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>>>◆東大寺【境内ガイド】- 大きくて迫力ある仏像たちに見守られているお寺

 

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