仏像、ときどきワンダー観光

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【仏像】矢田寺 本堂 - 「試(こころみの)地蔵菩薩」は地獄で会った地蔵菩薩を満慶上人が再現しようとしたお像

全体案内(レポ)>>>【奈良】◆矢田寺(金剛山寺)【境内ガイド】

矢田寺 本堂 特別拝観

本堂外観

本堂 正面

なかなか大きくて立派なお堂です。

平成の大修理を経ていますので、古いお堂ながらフレッシュさも感じます。

本堂 斜めから

十三重石塔にもお地蔵さま。

十三重石塔

裏手から見たところ。

本堂 裏手から


では、本堂にお邪魔します。

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本堂内の仏像

階段を上がり、靴を脱いでお堂内へ。
すぐに受付がありましたので、拝観料をおさめました。
(※奈良交通の臨時バスを降りるときに100円引きの券をいただいたので、そちらを使わせてもらいました)

配尊図

矢田寺(奈良) 本堂 配尊図
(矢田地蔵縁起)

矢田寺の起こり(縁起)を表した絵(複製)から説明します。(矢田寺「本堂特別拝観のしおり」を参考)。

人々を裁くことに心を痛めていた閻魔さま。
小野篁(おののたかむら:昼は嵯峨天皇に仕え、夜は閻魔王に仕えていた方)に相談。
 ↓
小野篁は満慶(満米)上人(お坊さん)を連れて、閻魔庁へ。
閻魔さまの悩みと取り除いた満慶上人は地獄の様子を見せてもらうことに。
 ↓
地獄の猛火のなかで、必死に人々や生き物を救う地蔵菩薩に出会います。
人々と地蔵菩薩の縁を結ぶように言われます。
 ↓
地獄から帰ってきた満慶さんは、地蔵菩薩の姿を思い出すがままに彫ろうとしますが、うまく彫れず。
 ↓
そこに4人のおじいさん(実は春日四社明神)が表れて、地獄で会ったお地蔵さんそのものの姿を彫り上げました。
(これが本堂ご本尊の地蔵菩薩とされる)
 ↓
満慶上人がためしに彫ったお像は「試みの地蔵菩薩」として祀ることに
(参考:現在裏堂に安置されているお像とは制作年代が合わないのですが、そこはまあ、あくまで伝説ということで)

本尊三尊

本堂正面の須弥壇に、地蔵菩薩立像、十一面観音立像、吉祥天立像のお三方が安置されています。

須弥壇の装飾として、楽器のモチーフが飾られ、とてもきらびやかで美しく、「このまま眺めていたら日が暮れてしまいそう」と思えるほどでした。

 

地蔵菩薩立像

地蔵菩薩立像(境内の看板を撮影)


平安時代、地蔵信仰が盛んになり、ご本尊になられたお地蔵さま。

ほおがふっくらされているからか、ややベビーフェイスな印象を受けました。

印相が特徴的で、左手に宝珠を載せ(後補)、右手は胸の前で親指と人差し指を丸めて合わせて(=つまりオッケーサイン)います。
「矢田型地蔵」とも呼ばれる形式。

一般に、地蔵菩薩は右手に錫杖をもつか、与願印を示すことが多いので、たしかに独特の形式です。

(参考>>>地蔵菩薩とは? - 如来のいない時代を任された救済者 - 仏像

十一面観音立像

十一面観音立像(拝観リーフレットを撮影)

創建当初はご本尊だったといわれる十一面観音。

木造のお像ですが、左肩からかけている条帛(帯状の布)は乾漆(木屎をまぜた漆で、成型に優れる)の技法が使われているのだとか。

参考>>>十一面観音とは? - 11の顔ですべての人々を見守る救済者 

吉祥天立像

矢田寺吉祥天立像(拝観リーフレットを撮影)


室町時代のお像なので、おとなりの十一面観音(8世紀)や地蔵菩薩(9~10世紀)に比べると新しいお像。
たしかに、着色が比較的よく残っています。

頭部はヒノキ(寄木造)、お身体は松、両手足先はヒノキ、天衣は桜、なのだそう。
16世紀に奈良で活躍した宿院仏師の作。

参考>>>吉祥天とは? - 豊穣と福徳を司る女神

(二天像)

須弥壇手前でお三方をおまもりしているのが二天像。
像容からして、四天王のうちの二体(持国天?と多聞天か?)だと思われます。

裏堂

本堂の奥、裏堂には、弘法大師坐像、試地蔵菩薩(こころみのじぞうぼさつ)立像、阿弥陀如来坐像が安置されています。

試地蔵菩薩(こころみのじぞうぼさつ)立像

試地蔵菩薩立像(拝観のしおりを撮影)

満慶上人が地獄で会ったお地蔵さまを具現化しようとして彫ったという伝説の残るお像。

手の高さは異なりますが、印相はご本尊と同じ「矢田型地蔵」。
頭部の曲線が均質で見事だと思いました。

阿弥陀如来(あみだにょらい)坐像

阿弥陀如来坐像(拝観のしおりを撮影)

平安時代の寄木造のお像。

”如来”ですから、一般的にはご本尊としてメインエリアに祀られることが多いですが、矢田寺では本堂の裏堂にいらっしゃいます。

泰然自若というか、落ち着いた表情をされています。

人が亡くなるときに極楽浄土に導いてくれるのが阿弥陀如来ですから、地獄で人々を救済する地蔵菩薩とは関係が深いわけですね。

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