仏像、ときどきワンダー観光

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【奈良博・特別展】「中将姫と當麻曼荼羅」- 巨大ながら細部まで精密な曼荼羅は中将姫が生きたことの証

2022年7月16日~8月28日まで奈良国立博物館にて開催された特別展「中将姫と當麻曼荼羅」の観覧記録です。

奈良国立博物館 エントランス

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【特別展】中将姫と当麻曼荼羅

中将姫って?

中将姫のエピソード(チラシを撮影)

 

中将姫は、奈良時代に藤原豊成の娘として生まれたお方。
幼い頃に実母を亡くし、継母に疎まれ殺されそうになります。
しかし、家来の計らいで一名をとりとめ、ひばり山で暮らした後、當麻寺にて出家。

ある日中将姫の前に、不思議な尼が現れ、蓮の糸をたくさん集めるように言われます。
蓮の糸をつむぐと、一晩で曼荼羅が完成した(綴織當麻曼荼羅)と伝わっています。

當麻曼荼羅(貞享本)

中将姫の祈りによって完成した「綴織当麻曼荼羅(8世紀)」を、江戸時代に写したものが「貞享本」。

この「貞享本」の本格修理終了にともない、今回の展覧会に出陳されました。

奈良博のチラシに一部掲載されているものです。↓

「中将姫と當麻曼荼羅」のチラシ


約4メートル四方もある巨大曼荼羅ですが、細部まできわめて精密に描かれていて衝撃的です。

私は(仏像は比較的知識あるものの)曼荼羅には全然詳しくないのですが、それでも「こ…これはすごい」と魅了されずにはおれないという感じでした。

當麻曼荼羅厨子扉

当麻曼荼羅厨子扉

 

當麻寺にて、「綴織當麻曼荼羅(8世紀)」のおさめられている厨子の扉。
金色の蓮の葉や花が幻想的です。

鎌倉時代につくられたものなので、源頼朝の名前もありました。

中将姫坐像

厨子入中将姫坐像

こちらは江戸時代に造られたお像(京都・大雲院所蔵)。

ほかにも中将姫のお像はいくつか出陳されていましたが、いずれも聡明な表情で美しいお顔立ちでした。

おそらく、聡明で美しかったからこそ、余計に継母から疎ましがられたのかもしれませんね。

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おわりに

継母に殺されそうになるって、(昔はよくあったのかもしれませんが)とても壮絶な人生ですよね。
仏道に進んだ後も、29歳の若さで亡くなっています(当時としては平均寿命がそのくらいだったようですが)。

命の危険を感じながらの暮らし、(継母とはいえ)親から疎まれるということ。
「私は何のために生まれてきたのだろう」と問うた日もあったのではないでしょうか。

それがきっと曼荼羅につながったのだと思います。

彼女の生きた証が、こうして1300年経った今でも大切に守り続けられていること、それが救いだなと感じました。