東寺 講堂
東寺境内の中心に位置する講堂。
初代の講堂は、空海さんによって835年に建てられましたが、1486年に焼失。
現在のお堂は1491年に再興された建物です。
東寺の講堂では、空海さんが構想した「立体曼荼羅」を拝観することができます。
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立体曼荼羅とは?
まず、曼荼羅とは、密教の教えをわかりやすく表現したもの(いろんな仏が集合した様子を表現)。一般には、紙や布、壁面などに二次元的に描かれることが多いです。
東寺講堂には、大日如来を中心として、全21体の仏像で構成された、立体の曼荼羅があります。
拝観リーフレットの写真だけではわかりづらいと思うので、簡単に配尊図を描きました。
すごい迫力であることが、なんとなく伝わりましたでしょうか。
「如来・菩薩・明王・天部」全カテゴリーの仏像が勢ぞろいしています。
しかも、21体中、16体は平安前期の作品で国宝!(※五智如来は重要文化財)
お像の配置について、少し説明します。
講堂の中央:如来部(五智如来)
→密教の5つの知恵を5体の如来に当てはめて表現
向かって右:菩薩部(五大菩薩)
→人々を救うべく五智如来が菩薩に変身したときの姿
向かって左:明王部(五大明王)
→救いがたい者たちを救うために五智如来が明王に変身したときの姿
図で表すとこうなります↓。
(もっと詳しく>>>五智如来とは? - 密教の5つの知恵を5体の如来で表現(大日・阿閦・宝生・無量寿・不空成就))
この五智如来・五大菩薩・五大明王の15の仏たちを囲むように、四天王と梵天・帝釈天が配置。
如来・菩薩・明王たちを天部が守っているイメージです。
各仏像について簡単に紹介
如来部(五智如来)
東寺監修のフィギュアでご紹介します(写真はすべてAmazonリンクです)。
〇大日如来
詳しく>>>【仏像の知識】大日如来とは? - 毘盧舎那仏がさらに発展した密教最高位の存在
〇阿閦如来(あしゅくにょらい)
すべてを正しく照らす知恵をもつ仏。
手の形(印相)は悪魔を退散させるためにとる降魔印。
〇宝生如来(ほうしょうにょらい)
すべてのものが平等で絶対的な価値がることを示す智慧の象徴。
印相は与願印で、人々の願いを聞き、かなえようとする意志が表されています。
〇阿弥陀如来(あみだにょらい)
よく観察して見極める知恵の象徴。
阿弥陀定印を結んでいるので、「あらゆる生き物を極楽浄土に導くぞ」という意志が表されています。
詳しく>>>阿弥陀如来とは? - 念仏を唱えた者を極楽浄土に導く仏
〇不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)
なすべきことを成就・完成させる知恵の象徴。
手の形は施無畏印で、人々の不安やおそれを除こうという意志が表現されています。
菩薩部(五大菩薩)
各如来が菩薩に変身したときの姿です。
〇金剛波羅蜜多菩薩(こんごうはらみたぼさつ):大日如来の化身
〇金剛薩埵菩薩(こんごうさったぼさつ):阿閦如来の化身
右手に金剛杵(こんごうしょ)、左手に五鈷鈴(ごこれい)を持ちます。
金剛杵は煩悩や敵を打ち破る武器、五鈷鈴は智慧を表しています。
〇金剛宝菩薩(こんごうほうぼさつ):宝生如来の化身
〇金剛法菩薩(こんごうほうぼさつ):阿弥陀如来の化身
〇金剛業菩薩(こんごうぎょうぼさつ):不空成就如来の化身
明王部(五大明王)
〇不動明王(ふどうみょうおう):大日如来の化身
詳しく>>>不動明王とは? - 怒りの姿に変身した大日如来
〇金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう):阿閦如来の化身
お堂内は暗いので見えづらいですが、目を5つも持っています。
詳しく>>>金剛夜叉明王とは? - 金剛杵(煩悩を破る武器)で悪を砕く
〇降三世明王(ごうざんぜみょうおう):宝生如来の化身
足元で踏まれているのはシヴァ神とその奥さん。
詳しく>>>降三世明王とは? - 三世(過去現在未来)にわたり三毒(煩悩)を鎮める仏
〇軍荼利明王(ぐんだりみょうおう):阿弥陀如来の化身
詳しく>>>軍荼利明王とは? - ヘビを巻き付ける不気味な姿だが障害をとりのぞいてくれる仏
〇大威徳明王(だいいとくみょうおう):不空成就如来の化身
6本の手足を持ち、水牛にまたがる姿。
詳しく>>>大威徳明王とは? - 6つの手と足と顔ですべての悪を倒す仏
梵天&帝釈天
〇梵天
詳しく>>>梵天とは? - お釈迦さまに仏教を広めるようすすめた創造神
〇帝釈天
詳しく>>>帝釈天とは? - 戦士の守護神 & 釈迦の全生涯の目撃者
実際に拝観してみての感想
講堂に入った瞬間、暗くてひんやりとしていることもあり、良い意味でゾクゾクしました。
想像以上に暗いので(→宇宙空間に見立てているからなのか、あるいは保存の面であまり強い光を当てられないからか)後ろのほうにいる広目天や多聞天は見えづらかったですが、仏像たちの存在感はビシビシと伝わってきました。
東寺の拝観リーフレットの表紙を飾っている梵天さんが特に人気で、その付近は少し混雑していました。
拝観当時の私は、四天王くらいしか知らず、講堂を宇宙空間に見立てたという空海さんの意図もほぼ理解できていなかったのですが……
それでも不思議なもので「なんかわかる」というか、鳥肌が立つような、身体に冷たい芯が一本通っていくような気分でした。
あの場所でしか味わえない感覚だと思います。
東寺のほかの仏像は?
観智院 - 獅子・象・馬・孔雀・迦楼羅に乗った五大虚空蔵菩薩像
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参考文献
お経と仏像で仏教がわかる本【完全保存版】 (洋泉社MOOK)