仏像、ときどきワンダー観光

おもに仏像のこと。不思議スポットやふつうの観光の話もたまにします

【仏像の知識】勢至菩薩とは? - 阿弥陀如来のサポート役

勢至菩薩(せいしぼさつ)とは?

勢至という名は「偉大な威力を得た者」という意味。
知恵によって人々を救う菩薩です。

単独で祀られることはなく、観音菩薩とコンビを組んで、阿弥陀如来の脇侍を務めています。

阿弥陀如来が死者を迎えにいくときは、観音菩薩と勢至菩薩が先導役です。

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勢至菩薩の特徴

宝冠に水瓶をつけている

頭にかぶっている宝冠に水瓶(すいびょう)をつけています。
水瓶は花びんのような形をしており、中には人々の願いを叶える水が入っています。

(水瓶つき宝冠のイメージ)

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(ちなみに、観音菩薩は、宝冠に「化仏(けぶつ)」をつけています。)

合掌していることが多い

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来迎阿弥陀如来(死者の魂を迎えに来る阿弥陀如来)の脇侍をつとめる勢至菩薩は、合掌していることが多いようです。

(ちなみに、観音菩薩は、魂の入れ物である「蓮台」を持っています)

勢至菩薩像の実例

冒頭でも触れましたが、単独で祀られるケースはなく(※博物館などで単独で陳列されていることはあります)、「阿弥陀三尊像」として祀られています。

来迎阿弥陀三尊像形式

京都 三千院

文化財|三千院のご案内|天台宗 京都大原三千院

向かって右が観世音菩薩、左が勢至菩薩。

勢至菩薩は合掌し、宝冠に水瓶をつけているのが確認できます。

また、観音・勢至菩薩とも、上半身を前にかがめた「大和座り」をしています。
「いままさに迎えに行こう」というのがよくわかるお姿ですね。

善光寺式 阿弥陀三尊(絶対秘仏)

舟形光背の中に阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩がまつられる「一光三尊形式」。
この形式における勢至菩薩は、両手を上下に合わせる梵篋印(ぼんきょういん)をしています。

(梵篋印イメージ)

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善光寺の阿弥陀三尊像は絶対秘仏のためお姿を拝観できませんが、「善光寺式(=善光寺にならってつくりました)」というお像は各地で造立され、現在でも結構残っているようです。

愛知 薬師寺

西尾市の文化財 一光三尊善光寺如来立像 - 西尾市役所

 

奈良国立博物館

勢至菩薩立像|奈良国立博物館

梵篋印(ぼんきょういん)を結んでいることから、善光寺式だとわかります(元は三尊像ですが、博物館では勢至菩薩単独での陳列かと思われます)。

 

shishi-report-2.hatenablog.com

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おわりに

勢至菩薩は、単独で祀られることがほぼないため、あまり印象に残らない仏像かもしれません。

阿弥陀三尊像を拝観する際には、脇侍として勢至菩薩がいらっしゃらないか、注目してみましょう。

観音菩薩との見分け方は「宝冠に水瓶がついていれば勢至菩薩、化仏なら観音菩薩」です。

参考文献

仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)

写真・図解 日本の仏像 この一冊ですべてがわかる!

イラストでわかる 日本の仏さま (中経の文庫)

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