地蔵菩薩(じぞうぼさつ)とは?
地蔵菩薩は、いわゆる「おじぞうさん」ですね。
本格的な仏像を観たことがないという方でも、道端にたたずむ石像なら観たことがあるのではないでしょうか。
私たちを近くで見守ってくれているお地蔵さんですが、実は、お釈迦さまに「無仏時代(※)」を任されたお方です。
※無仏時代というのは、お釈迦さまが亡くなった後~弥勒菩薩が如来としてこの世にやってくるまでの間(56億7000万年間)の、「如来がいない時代」をいいます。
地蔵菩薩はいろんな世界を行き来しており、地獄でさえも救済に来てくれます。
閻魔さまの裁きを受ける際にも助けてくれるのだとか。
平安時代以降、地獄に落ちることを恐れた人々に厚く信仰されたため、日本では身近な存在なのですね。
また、地獄の賽の河原で子供を救うということから、水子供養の本尊という役割もあります。
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地蔵菩薩の特徴
僧形(お坊さんの姿)をしている
ほかの菩薩像は髪を高く結い上げていたり、豪華な宝冠を被っていたりしますが、地蔵菩薩は髪を剃った坊主頭です。
袈裟(けさ)を身に着けており、ぱっと見は「お坊さん」のお姿です。
これにも理由がありまして、娑婆世界(=この世)で人々を救うため、この世になじむ格好をしているというわけなんですね。
宝珠(ほうじゅ)や錫杖(しゃくじょう)を持つこともある
・左手に宝珠(左手は与願印)
・左手に宝珠、右手に錫杖
・何も持たない
大きく分けるとこの3パターンが多いようです。
(宝珠(右)と錫杖(左)のイメージ)
お寺などにいらっしゃる仏像の場合は「宝珠+錫杖」が多いですが、道端のお地蔵さん(石仏)だと合掌していたりしますね。
若い姿で表現されることが多い
地蔵菩薩はお坊さんの姿で表わされるので、高僧像(えらいお坊さんの像)とどう違うの?と思われるかもしれません。
高僧像がつくられるには相当な実績や弟子からの信頼が必要なので、結果的に、晩年の姿(おじいさん像)で表現されます。
一方、地蔵菩薩は老人風に造られることが少なく、つるりとしたお顔が特徴です。
ざっくり分けるなら、老人のお坊さん→高僧像、若いお坊さん→地蔵菩薩、という感じですね(例外もあります)。
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地蔵菩薩像の実例
立っている像(立像)
地蔵菩薩は自らあちこちに出向いていきますので、立ち姿のお像が多いようです。
奈良 東大寺(?) 雲の上に立つ地蔵菩薩(快慶作)
以前は東大寺の公慶堂に安置されていたのですが、現在は別の場所(東大寺ミュージアム? 詳細不明です)で管理しているようです。
理知的な表情、今にもたなびきそうな衣文など、天才仏師快慶の特徴が表れているお像です。
雲座の上に蓮華座があり、その上に立っているというのも珍しい。
大阪 藤田美術館(2022年4月リニューアルオープン)
こちらも快慶の作。
すべすべしたお顔や袖の写実性は「やはり快慶」と思わされます。
驚いたのは、衣文の着色がかなりきれいに残っていること。
私は奈良国立博物館で過去に開催された「藤田美術館展」で観ました。
2022年4月リニューアルオープン予定です。
座っている像(坐像)
京都 六波羅蜜寺
上で紹介したのは快慶作ですが、こちらは運慶作の地蔵菩薩(坐像)。
運慶と快慶は同じ工房に属し、二人とも天才ですが、仏像をみるとやはりそれぞれに個性がありますね。
地蔵菩薩同士を見比べると楽しいと思います。
ちなみに、六波羅蜜寺には定朝作の地蔵菩薩立像も安置されています。
空也上人の像も必見ですし、開運推命おみくじも楽しいのでぜひ。
shishi-report-2.hatenablog.com
公式サイト>>>重要文化財 - 六波羅蜜寺
奈良 福智院
丈六仏(※)サイズの大きな地蔵菩薩を拝観できるお寺。
(※)丈六仏とは、立っている状態で高さが「一丈+六尺=十六尺=約 4.85 m」の仏像のこと。座っている像(坐像)では、およそ半分の高さ(2.4 mくらい)になりますが、坐像でも丈六仏と呼びます。
ちなみに、丈六仏より大きいと「大仏」と呼ばれます。
大きな光背には小さな化仏が560体も!
本体(大きいほう)と六地蔵を合わせると567体となり、56億7000万年の時代を任されたことに符号するそうです。
福智院|奈良県観光[公式サイト] あをによし なら旅ネット|奈良市|奈良エリア|神社・仏閣|神社・仏閣
三尊像形式
奈良 十輪院
中央に地蔵菩薩、向かって左に釈迦如来、向かって右に弥勒菩薩、という珍しい配置。しかも石像です。
過去(釈迦如来)・現在(地蔵菩薩)・未来(弥勒菩薩)を表現しています。
本堂は国宝です。
shishi-report-2.hatenablog.com
公式サイト>>>南都 十輪院 (真言宗醍醐派)|拝観|石仏龕
他の菩薩とコンビを組むケースも
・虚空蔵菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍
・観音像と対で薬師如来の脇侍
をつとめるケースもあります。
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おわりに
我々にとって身近なお地蔵さんですが、如来なき時代に人々を救済するという大変な任務を背負っている存在。
民間信仰によって発展した面もあり、道端の石像なども含めると、いろんなタイプのお地蔵さんがいます。
キャラクターグッズなども充実していますよね。
まずはご近所のお地蔵さんに注目してみてください。
なぜそこに安置されたのか、背景などを調べると面白いと思います。
参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
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