初めての奈良旅行で仏像の魅力にハマり、はや8年。
仏像のおかげで、旅行や美術展がさらに楽しくなり、人生の充実度が上がった気がします。
今後、まだまだいろんなお寺や仏像を訪ねる予定ですが、ここらで一旦記憶を整理しておくのもいいなと、記事を書くことにしました(2021年に執筆、2024年時点で変更なし)。
※ これまでお会いしてきたどんな仏像も、それぞれに魅力があるため、お像自体に優劣をつける意図はありません。
「仏像にまつわる個人的思い出10選」というスタンスで語ってまいりたいと思います。
- 思い入れのある仏像10選
- ① 東大寺 大仏殿 広目天(こうもくてん)立像:仏像にハマるきっかけをくれた
- ② 薬師寺 金堂 薬師三尊像(やくしさんそんぞう):黒く光る姿が美しい
- ③ 唐招提寺 金堂 千手観音(せんじゅかんのん)立像:953本の手、持ち物も興味深い
- ④ 葛井寺 千手観音坐像 (トーハクで観覧):それぞれの手に表情を感じる
- ⑤ 奈良国立博物館 出山釈迦如来(しゅっせんしゃかにょらい)立像:山を下りる釈迦の姿が貴重
- ⑥ 興福寺 北円堂 無著菩薩(むじゃくぼさつ)立像:今にも動き出しそうな写実性
- ⑦ 東大寺 中門 兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)の足元の「地天女&にらんば・びらんば」:地天女のすました表情とコミカルな邪鬼コンビがいい
- ⑧ 興福寺 東金堂 維摩居士(ゆいまこじ)像:厳しさの向こうにあるのは慈悲
- ⑨ 高野山 霊宝館 こんがら童子:友人にそっくり
- ➉ 東寺 観智院 五大虚空蔵菩薩(ごだいこくうぞうぼさつ):乗り物の動物にも注目
- おわりに
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思い入れのある仏像10選
① 東大寺 大仏殿 広目天(こうもくてん)立像:仏像にハマるきっかけをくれた
まず最初に挙げるのは、東大寺の大仏さま、ではなく、大仏さまをお守りしている広目天(こうもくてん)。
四天王のうち、西方担当のガードマンです。
特徴的なのは、手に筆と巻物を持っているところ。
広目天は、何でも見通せる目を持っているので、その目で見たことを巻物に書きつけるのです。
このお像の前に立ったとき、うまく言い表せないのですが、雷に打たれたような衝撃を受けました。
私にとっては仏像探訪ライフの始点となるお像です。
(くわしくは>>> 仏像に魅かれるようになったキッカケ)
② 薬師寺 金堂 薬師三尊像(やくしさんそんぞう):黒く光る姿が美しい
薬師如来と、そのサポート役の日光・月光菩薩。
この三人(仏)組自体はスタンダードな形式ですが、奈良の薬師寺のお像が特異なのは、美しく黒く光るお身体。
元は銅造で金めっきが施されていたそうなのですが、火災のときに金が溶けて現在の黒いお身体になったそう。
オリジナルであり、かつ、美しい、という普遍的なすばらしさもあるのですが、「失うことで得られるものもある」ということをお像が体現してくれているような気もして、そこもグッときます。
薬師寺拝観レポート>>>薬師寺 - 火災に耐えた美しき薬師三尊像・法話で落涙しかける
③ 唐招提寺 金堂 千手観音(せんじゅかんのん)立像:953本の手、持ち物も興味深い
千手観音は、仏像として表現される場合、手は42本に省略されることが多いです。
が、唐招提寺の千手観音は、手が1000本近く(正確には953本)もあるお像。
お寺での拝観時、千手観音像のほうからスーッと涼やかな風が吹いてきて、心が洗われるような気持ちになりました。
手にしている持ち物も魅力的で、ずっと見ていられます。
※イメージがつきやすいようイラストに色をつけていますが、実際には仏像のお身体と同じトーンです。
↓持ち物の解説記事、けっこう頑張って描いたので、よろしければご覧ください。
shishi-report-2.hatenablog.com
④ 葛井寺 千手観音坐像 (トーハクで観覧):それぞれの手に表情を感じる
こちらも千手観音ですが、座っているバージョンです。
手はなんと1041本!
大阪の葛井寺(ふじいでら)にいらっしゃるお像で、普段は秘仏です(公式サイト>>>西国第5番紫雲山葛井寺〜国宝千手観音の寺〜 | 日本最初の千手観音)。
私はお寺ではなく、東京国立博物館の特別展で拝観したのですが、背中側まで回って見ることができて、すごく感動したのを覚えています。
手が1000本以上あるのに、全体として破綻がなく美しい。
手の一本一本に抜かりがなくて、表情を感じることにも驚きました。
観覧レポート>>>【東京国立博物館】仁和寺展② - 1041本の手を持つ、葛井寺の千手観音
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⑤ 奈良国立博物館 出山釈迦如来(しゅっせんしゃかにょらい)立像:山を下りる釈迦の姿が貴重
元をたどると「仏像=お釈迦様(※)」だったので、釈迦如来像にはいろんなスタイルのお像があります。
(※釈迦は自身を信仰の対象にはしなかったので、仏像がつくられるようになったのは彼が亡くなって数百年後のことです)。
なかでも、出山釈迦如来像は、「苦行は無意味」と悟った釈迦が山を下りるときの姿を表現したお像。
苦行後なので、頬がこけ、あばら骨が浮き上がり、足元もふらふらな感じがすごくリアルに表現されています。
釈迦如来像としては珍しいタイプです。
奈良国立博物館が所蔵していますが、常設展ではあまり見ない気がします(特別展にはお出ましになることがある>>>【特別展】奈良博三昧 - 「奈良博といえばコレ!」な逸品がずらり)
⑥ 興福寺 北円堂 無著菩薩(むじゃくぼさつ)立像:今にも動き出しそうな写実性
無著(むじゃく)・世親(せしん)菩薩は、4~5世紀インドのお坊さん兄弟。
功績を遺したお坊さんが、亡くなった後、菩薩として信仰されるケースです。
無著も世親も、写実性がすばらしいのですが(運慶工房の作)、私はどちらかというと無著菩薩が好きです。
東京国立博物館の「運慶展」で見たとき、瞳が照明を反射してキラリと光り、今にも動き出すんじゃないかと思いました。
その前後、興福寺の北円堂でも幾度かお会いしていますが、なんかもう、(勝手に)気持ちが通じ合っているような気がしてしまって、とても心がやすらぐお像です。
興福寺北円堂拝観レポート>>>興福寺 北円堂 - 「無著・世親菩薩」は何度観ても感動
⑦ 東大寺 中門 兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)の足元の「地天女&にらんば・びらんば」:地天女のすました表情とコミカルな邪鬼コンビがいい
こちらは、東大寺の中門(大仏殿の前の門)に立つ、兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)の足元。
中央が地天女で、両サイドにいる邪鬼は尼藍婆(にらんば)と毘藍婆(びらんば)。
兜跋国がピンチに襲われたときに、毘沙門天が地天女&邪鬼コンビに支えられ、地中から湧いて出てきたときの様子を表しています。
ちなみに、毘沙門天の全身像はこちら(金網で見えにくいかもですが……)。
より詳しくお知りになりたい方は>>>東大寺 中門 - 江戸時代に再興された兜跋毘沙門天&持国天
⑧ 興福寺 東金堂 維摩居士(ゆいまこじ)像:厳しさの向こうにあるのは慈悲
維摩(ゆいま)さんは、『維摩経』というお経に登場する、在家の仏教徒。
仏教に詳しくて口が立つので、維摩さんが病に伏したとき、だれもお見舞いに行きたがらなかった(みんな論破されたことがあるので)というエピソードもあるほどの切れ者。
そう聞くと、気難しそうな人かと思うのですが、維摩さんが病になった原因は「人々の苦しみに共感しすぎたから」という、実はとんでもない慈悲をお持ちなんです。
興福寺の東金堂で維摩さんの前に立った時、ちょうどお線香が切れるタイミングだったようで、もくもくと一気に煙が立ち上がり、頭からかぶる状況になりました。
単なる偶然ではありますが、なんだか励ましてもらったような気になりました。
拝観レポート>>>興福寺 東金堂 - 維摩居士像と文殊菩薩像の対話シーンが再現
⑨ 高野山 霊宝館 こんがら童子:友人にそっくり
不動明王の使者、八大童子(はちだいどうじ)のうちの、こんがら童子。
小心者で従順な性格です。
私はこちらのお像もお寺ではなく、「運慶展」にて拝観しましたが、やっぱり写実性がすばらしいお像です。
というか、私の友人にそっくりな人がいます(しかも人格者)。
(冗談で、「前世?でモデルを務めたのでは」なんて話すほど)
友人に似ていることもあって、私にとっては親近感がありまくるお像です。
➉ 東寺 観智院 五大虚空蔵菩薩(ごだいこくうぞうぼさつ):乗り物の動物にも注目
無尽蔵の知恵を持っている、虚空蔵菩薩を5体に開いて祀ったお像が「五大虚空蔵菩薩」です。
(参考>>>虚空蔵菩薩とは? - 巨大な知恵と慈悲で人々を救済&強力な記憶力を授ける)。
それぞれ、獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅(かるら)に乗っているので、動物たちに注目するのも面白いです。
また、個人的な思い出もあります。
観光で疲れてボーっとしていた私、観智院内で軽く迷子になり、「なんかまだ見てないものありそうだけど、いっか」と玄関の方に戻ろうとしたところ、外国人旅行者らしき女性が「見マスカ?」と片言の日本語で声をかけてくれたんです。
それで、彼女が指す方向に行ってみたら、こちらの五大虚空蔵菩薩がいらっしゃった、という思い出。
ちょっとした心遣いがとても嬉しかったのをよく覚えています。
拝観レポート>>>東寺 観智院 - 獅子・象・馬・孔雀・迦楼羅に乗った五大虚空蔵菩薩像
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おわりに
なかなか10選に入りきらず苦戦しましたが、自分としては納得のいく記事になったと思います。
こうしてまとめてみると、「いろんなお像に会ってきたなぁ」という実感とともに、仏像たちが応援してくれているような、そんな心強い気持ちになります。
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