仏像、ときどきワンダー観光

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【仏像の知識】維摩居士(ゆいまこじ)とは? - 商人ながら文殊菩薩と問答できるほどの仏教の理解者

維摩居士(ゆいまこじ)とは?

サンスクリット版全訳 維摩経 現代語訳 (角川ソフィア文庫)


維摩さんは、『維摩経』というお経に登場する、インドの大商人。
なお、「居士(こじ)」とは出家せずに仏道を学ぶ男性のことです。

架空の人物であるとも、実在したとも言われています。
(『維摩経』を読むと架空の存在のようですが、モデルとなった人物はいたのではないか、とする説が多いようです)

菩薩にすら敬遠される切れ者

出家したお坊さんが偉いと考えられていた時代において、維摩さんは出家していないにも関わらず、仏教を深く理解していた人。
弁舌にも長けていました。

あるとき維摩さんが病気になり、お釈迦さまが「誰かお見舞いに行きなさい」と言うのですが、みんな維摩さんにやり込められた経験があるので、行きたがらない……。

そこで、知恵の象徴である文殊菩薩が行くことになりました。

寝込んでいた維摩さんは身体を起こし、文殊菩薩と問答を交わします。
そのときの維摩さんの姿がお像になっています。

ちなみに、菩薩たちから敬遠されていた維摩さんですが、彼が病気になったのは、「人々の苦しみに共感しすぎたから」という、実は慈悲にあふれたお方でもあります。

詳しい特徴を見ていきましょう。

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維摩居士像の特徴

文殊菩薩と一緒に祀られることが多い

「病に伏した維摩さんのところにお見舞いにきた文殊菩薩との対話場面」が表現されているので、文殊菩薩と並んだり、向き合ったりするケースが多いです(仏画も)。

頭巾をかぶる

お像によって多少形が違いますが、頭に頭巾をかぶっています。

維摩居士像の実例

奈良 興福寺 東金堂

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東金堂パンフレットを撮影したもの

薬師如来の脇に、文殊菩薩とともにに座ります。
慶派仏師の定慶(じょうけい)の作と伝えられるお像。

老人の姿で、眉間にしわを寄せるような、厳しい表情。

左手の二本指をこちらに突き出しているのは、「不二」について問答していることを表していると思われます。

詳しく>>>【仏像】興福寺 東金堂 - 18体が国宝! 維摩&文殊の問答コンビにも注目 - 仏像、ときどきワンダー観光

奈良 法華寺 本堂

公式サイトの写真>>>https://hokkejimonzeki.or.jp/about/treasure/

法華寺の本堂を上がってすぐの左手におられます(気をつけないと見逃す可能性あり)。
文殊菩薩と向き合う形式で安置されています。

老人よりも若い、壮年の姿で、蓮の葉をくしゃっとしたような頭巾が特徴的。手元には蓮の葉がやわらかく握られています。

興福寺のお像とは雰囲気が異なるお像で、法華寺のほうがマイルドに感じます。

 

shishi-report-2.hatenablog.com

 

滋賀県 延暦寺 国宝殿

頭巾が長めでちょっとロングヘアっぽい維摩さん。
法華寺のお像よりもさらに若い雰囲気。
病床にあるためか、少し苦しそうな切なそうな表情に見えます。
テーブルのようなものに肘をついており、これも身体がつらいことを表現していると思われます。

国宝殿内に安置されていますが、重要文化財です。

www.hieizan.or.jp

 

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おわりに

彫像として作例が少ないので、あまりメジャーではないかもしれませんが、私はとても好きなお像です。

有名どころ3体を整理しておきます。
・興福寺 東金堂のお像 (国宝)
・法華寺 本堂のお像(国宝)
・延暦寺 国宝殿のお像(重要文化財)

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☆一覧で表示>>>仏像の種類一覧 

☆ 思い入れのある仏像10選

 

shishi-report-2.hatenablog.com

 

参考文献

仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)

『維摩経』 2017年6月 (100分 de 名著)

増補改訂 カラー版 お経と仏像でわかる仏教入門 (宝島社新書)