仏像を大きく分けると「如来」「菩薩」「明王」「天部」の4グループ。
これに、神様や偉いお坊さんの像(垂迹神・高僧・羅漢像)を加えて5グループとすることもあります。
最も位が高いのが「如来」で、「菩薩」「明王」「天部」と続き、各グループごとに役割が異なります。
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〈如来(にょらい)〉
如来とは、真実から来た者(の総称)。
仏教を広める仏、あるいは仏教の象徴。
如来像のモデルは「悟りを開いた釈迦の姿」が基本。
出家後なので、粗末な衣をまとうのみの質素なお姿です(※大日如来を除く)。
[如来の特徴]
①肉髻(にっけい)
知恵が発達しすぎて頭頂部が膨らみ、鏡餅のようになっています。
②白毫(びゃくごう)
眉間にある右巻きの白毛、伸びると1丈五尺(約4.5メートル!)。
光を放って世界を照らします。
③螺髪(らほつ)
右巻きにカールした髪の毛が固まりになっています。
[如来の例]
釈迦如来(しゃかにょらい)、阿弥陀如来(あみだにょらい)、薬師如来(やくしにょらい)、毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)、大日如来(だいにちにょらい)など
〈菩薩(ぼさつ)〉
菩薩は、悟りを求めて&多くの人々を救うために修行中の仏。「悟り」と「人間の世界」をつなぐ役割。
菩薩像のモデルは、出家する前の王子時代の釈迦。
出家前なので、アクセサリーなどをつける豪華な姿で表現されることが多いです。
[菩薩の特徴]
① 豪華な衣装やアクセサリーを身につける
・ショール(天衣:てんね)
・宝冠
・ネックレス(瓔珞:ようらく)
・ブレスレット(腕釧:わんせん)
などを装着した豪華なお姿が多いです(※地蔵菩薩などをのぞく)。
② 持物(じもつ)を持つ
手には水瓶(すいびょう)や蓮華(れんげ)などを持っていることが多いです。
[菩薩の例]
〇観音菩薩
聖観音(しょうかんのん)、十一面観音(じゅういちめんかんのん)、千手観音(せんじゅかんのん)、如意輪観音(にょいりんかんのん)、馬頭観音(ばとうかんのん)、不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)、准胝観音(じゅんていかんのん)など
〇観音以外の菩薩
弥勒菩薩(みろくぼさつ)、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)、地蔵菩薩(じぞうぼさつ)、勢至菩薩(せいしぼさつ)、日光菩薩(にっこうぼさつ)・月光菩薩(がっこうぼさつ)、薬王菩薩(やくおうぼさつ)・薬上菩薩(やくじょうぼさつ)など
〈明王(みょうおう)〉
やさしく諭しているだけで全員が救われるかというと……残念ながら難しいことも。
相手の性質によっては厳しく対応することも必要、ということで、厳しい表情や恐ろしい姿をしているのが明王(※孔雀明王をのぞく)。
ルーツはバラモン教やヒンドゥー教の神で、密教が成立する過程で仏教に取り入れられました。
[明王の特徴]
① 忿怒相(ふんぬそう)
怒りに満ちた表情をしています。
② 光背が燃えさかっている
煩悩を焼き尽くす火炎を背負っていることが多いので、光背がごうごうと燃えているように表現されます。
③ 持物などがおどろおどろしい
蛇を身体に巻きつけていたり、ドクロを持っていたり、迫力あるお姿です。
[明王の例]
不動明王(ふどうみょうおう)、降三世明王(ごうざんぜみょうおう)、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、大威徳明王(だいいとくみょうおう)、金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)、孔雀明王(くじゃくみょうおう)、愛染明王(あいぜんみょうおう)、烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)、大元帥明王(たいげんすいみょうおう)など
〈天部(てんぶ)〉
天部は「仏教を信じる心を護る」役割。
仏教界におけるガードマン、ともいえるでしょうか。
元々は古代インドのヒンドゥー教やバラモン教の神々。
仏教が発展する過程で取り入れられていきました。
中国や日本など各国で独自の発展、広がり方をした仏像もあるので、非常にバリエーションに富んでいます。
[天部の特徴]
大別すると
・貴顕天部(きけんてんぶ)
温和な貴人の姿→梵天・帝釈天・吉祥天など
福徳をもたらす存在が多いです。
・武装天部(ぶそうてんぶ)
甲冑・武器などで武装した姿→四天王・金剛力士(仁王)など
仏教を守護するガードマン。
如来や菩薩を守るような配置で立っていたりします。
お寺の大門にて厳しい表情で迎えてくれる仁王像(金剛力士像)なども天部です。
[天部の例]
梵天(ぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)、金剛力士(こんごうりきし)・執金剛神(しゅこんごうしん)、四天王(してんのう) - 持国天(じこくてん)・増長天(ぞうちょうてん)・広目天(こうもくてん)・多聞天(たもんてん)、毘沙門天(びしゃもんてん)、兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)、吉祥天(きっしょうてん・きちじょうてん)、弁才天(べんざいてん)、訶梨帝母(かりていも)※別名:鬼子母神(きしもじん)、伎芸天(ぎげいてん)、大黒天(だいこくてん)、韋駄天(いだてん)、閻魔天(閻魔王:えんまおう)関連⇒十王(じゅうおう)、摩利支天(まりしてん)、歓喜天(かんぎてん)、深沙大将(じんじゃだいしょう)、荼吉尼天(だきにてん)、妙見菩薩(みょうけんぼさつ)
天部で構成されるグループ
十二神将(じゅうにしんしょう)、二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)、十二天(じゅうにてん)
垂迹神(すいじゃくしん)
垂迹神とは、仏さまが日本古来の神様と結びついて誕生した神々のこと。
日本独自の「神仏習合」のスタイルで、平安~明治時代(神仏分離令が出るまで)続きました。
彫像は多くはないですが、僧形八幡や蔵王権現など、意外とお見かけするので、整理しておきます。
垂迹神の種類
僧形八幡(そうぎょうはちまん)、雨宝童子(うほうどうじ)、青面金剛(しょうめんこんごう)、蔵王権現(ざおうごんげん)、新羅明神(しんらみょうじん)、三宝荒神(さんぽうこうじん)、七福神(しちふくじん)
羅漢(らかん)
羅漢(らかん)とは、お釈迦さまの弟子や、最高位の修行僧のこと(正しくは「阿羅漢(あらかん)」)。
人間でありながら、悟りを開き、これ以上学ぶことがない聖者たちです。
(羅漢とはちょっと違うのですが、釈迦の弟子ということで)
高僧(こうそう)
高僧とはその名からも想像がつく通り、仏教の普及に多大なる影響を与えたお坊さんです。
代表例でいうと、失明しながらも中国から日本にやってきた鑑真や、奈良の大仏造立に奔走した行基などが挙げられます。
実在の人物なので、生前の姿がありありと浮かぶような姿で表現されることが多いです。
無著(むじゃく)・世親(せしん)菩薩、聖徳太子(しょうとくたいし)、鑑真(がんじん)、宝誌和尚(ほうしわじょう)、役行者(えんのぎょうじゃ)or 役小角(えんのおづぬ)、弘法大師(空海)(こうぼうたいし くうかい)、伝教大師(最澄)(でんきょうだいし さいちょう)、空也上人(くうやしょうにん)、行基菩薩(ぎょうきぼさつ)、興正菩薩(叡尊)(こうしょうぼさつ えいそん)、慈恵大師(良源) (じえたいし りょうげん)
東大寺の有名お坊さん像 - 良弁(ろうべん)・行基(ぎょうき)・重源(ちょうげん)・公慶(こうけい)
(参考)もともと、仏像は存在しなかった
仏教の開祖である、お釈迦さま。
お釈迦さまは、自分の存在を信仰の対象にはしなかったので、当時は仏像はありませんでした。
お釈迦さまが亡くなった後も、仏像ではなく、卒塔婆や法輪や菩提樹の木や仏足石などが釈迦の存在を象徴していたそうです。
仏像がつくられ始めたのはそれから数百年も経ってからのこと(紀元前1世紀ころ)。
当時の文化や美術の影響を受けてのことだそうですが、「目に見えるもの」が欲しかったのかもしれませんね。
そこからさまざまな形の仏像がつくられ始め、日本に渡ってきたのが538年(552年という説も)。
以来、日本でも独自に仏像がつくられるようになり、大切に守られてきたわけです。
お釈迦様からすれば、仏像崇拝という形式は本意ではないのかもしれませんが、仏像をきっかけに仏教に興味を持ったという人、またそれによって救われたという人もいるでしょうから、仏像は重要な役割を担っているともいえるのではないか、と私は思います。