二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)とは?
二十八部衆とは、千手観音&千手観音を信仰する人々を守る28の神々。
各人(神)が、それぞれの分野で力を発揮するので、全方位の守護が可能になるという、無敵グループ。
全員、仏教では「天部」カテゴリに所属し、「仏教を守護する」役割の方々です。
詳しい特徴を見ていきましょう。
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二十八部衆のメンバー
二十八部衆のメンバーは諸説あり、固定していないようです。
本記事では仁和寺の観音堂の例を示していきます。
※なお、各写真は、過去に東京国立博物館にて開催された特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」にて撮影したものです(仁和寺のお堂内では撮影できません)。
仁和寺観音堂の二十八部衆(+風神雷神)
仁和寺観音堂では、中央に千手観音、その両脇に不動明王と降三世明王、
さらにその左右に二十八部衆が安置されています。
風神&雷神は二十八部衆ではないのですが、一緒に安置されるケースが多いようです。
1列目メンバー
(向かって)右端から左端に向かう順に紹介していきます。
那羅延堅固王(ならえんけんごおう):金剛力士(仁王)の阿形(口をあけている)
那羅延堅固王は、金剛力士(こんごうりきし)の阿形の別名。
簡単にいうと、「仁王様の口を開いたほう」と同じです。
参考>>>金剛力士(仁王)・執金剛神とは? - 金剛杵を持つお寺のガードマン
五部淨居天(ごぶじょうごてん):色界第四禅天に住む5人の聖者の総称
(詳細勉強中)
婆藪仙人(ばすせんにん):仏法を守護する神
婆藪仙人(ばすうせんにん)も仏教の守護神ですが、前身は古代インド神話の聖者でした。
手にお経を持ち、杖をつく姿です。
仏教では火天(インド神話の火の神)の部下で、吉祥天の兄といわれています。
散脂大将(さんしたいしょう):毘沙門天の部下の夜叉
散脂大将は、毘沙門天の部下の夜叉(やしゃ)。
もとは古代インドの神ですが、上司の毘沙門天が仏教に取り入れられたタイミングで、一緒に取り入れられたようです。
奥さんは鬼子母神(きしもじん)で、超子だくさん(数百人とも)とされています。
ちなみに奥さんも二十八部衆の一員です(二十八部衆のときは「神母天(じんもてん)」という名前)。
持国天(じこくてん):四天王(のうち東方担当)
四天王のうち、東方エリアの守護を担当する増長天。
東の方角の守護を担当しています。
剣を振り上げ、厳しい表情。
詳しく>>>四天王とは? - 東西南北に立ち仏教を守る四人組
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(増長天と持国天の間に千手観音・不動明王・降三世明王が入ります)
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増長天(ぞうちょうてん):四天王(のうち南方担当)
(写真がぼやけていてすみません)
仏像界ではおなじみ四天王のうちの増長天。
南の方角の守護を担当しています。
赤い身体に甲冑をつける姿は、のちに紹介する金毘羅王と似ていますが、よく見ると甲冑のデザインなどが異なっています。
金毘羅王(こんびらおう):別名「クビラ」ワニを神格化した存在
金毘羅王(こんびらおう)は別名「宮毘羅(くびら)」(十二神将メンバーでもある)。
前身は、ヒンドゥー教のガンジス川のワニを神格化した水神でした。
薬師如来をサポートするとき:宮毘羅(くびら)大将
千手観音をサポートするとき:金毘羅(こんびら)王
と名前を変えるので混乱しますね。
摩和羅王(まわらおう):別名「地天」(大地を司る神)
ヒンドゥー教では、大地は「我慢強い女性」にたとえられました。
世が乱れてその重みに大地が耐えられなくなると、神は姿を変えて世直しをしてまた天に戻ると信じられていたそうです。
この大地の神を仏教に取り入れた存在が「地天(地天女)」です。
難陀龍王(なんだりゅうおう):仏法を守護する龍神
難陀龍王は、仏教を守護する龍神(八大竜王の一員)。
龍のボディがダイナミックに巻き付いています。
密教で雨ごいをするときに拝む対象でもあるようです。
より詳しく知りたい方は、トーハクブログがおすすめ>>>東京国立博物館 - 1089ブログ
密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし):金剛力士(仁王)の口を閉じているほう
密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし)は、金剛力士の吽形(うんぎょう)の別名。
簡単に言うと、仁王様の口を閉じているほう、です。
仏教のガードマン的存在。
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2列目メンバー
向かって右端→左端の順で紹介しています。
摩睺等迦王(まごらかおう):元ヘビの音楽神
元ヘビということで、たしかに頭上にヘビがとぐろを巻いているのが確認できます。
写真を撮影した角度のせいでわかりづらいですが、琵琶を抱えています。
緊那羅王(きんならおう):半分ヒトで半分神の音楽神
「キン・ナラ」とは、「人か、人でないか」の意。
半分人で半分神ということのようです。
八部衆のメンバーでもあります。
音楽神なので、肩から鼓をかけています。
満仙王(まんせんおう):別名「満賢夜叉」八大夜叉大将の一つ
(資料が少なく、勉強中です。わかり次第追記します)
沙迦羅龍王(さからりゅうおう):蛇を神格化した存在、八大龍王の一つ
(粗い写真しかなくてすみません)
八大龍王メンバーでもある沙迦羅龍王。
龍王はヘビを神格化した存在です。
緑色のお顔からも、なんとなく竜の感じがします。
多聞天(たもんてん):四天王のうち北方担当
四天王メンバーの一尊、多聞天。
北の守護を担当しています。
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(広目天と多聞天の間のエリアに千手観音・不動明王・降三世明王)
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広目天(こうもくてん):四天王(のうち西方担当)
四天王メンバーの一尊、広目天。
西の守護を担当しています。
広目天の持ちものは、筆と巻物が多いですが、こちらのお像は戟(げき)という武器を持っています。
阿修羅王(あしゅらおう)
元は戦闘神で、いつも戦っていた阿修羅。
帝釈天との闘いに敗れた後、釈迦の説法で改心、仏教の守護神となりました。
釈迦の教えを広める手助けをする「八部衆」グループにも所属しています。
興福寺の阿修羅像は華奢な少年のような姿ですが、仁和寺の二十八部衆に所属する阿修羅王は、厳しい表情をしています(こちらのほうが一般的な姿らしい)。
詳しく>>>阿修羅とは? - 帝釈天との闘いに敗北後、仏教の守護神に
魔醯首羅王(まけいしゅらおう):別名「大自在天」(ヒンドゥー教のシヴァ神)
魔醯首羅王(まけいしゅらおう)の別名は、「大自在天(だいじざいてん)」。
ヒンドゥー教のシヴァ神が仏教に取り入れられて大自在天となりました。
金大王(こんだいおう):八大夜叉大将の一つ、邪悪なものが近づかないようガード
(資料が少なく、勉強中です。わかり次第追記します)
神母天(じんもてん):別名「訶梨帝母」or「鬼子母神」子ども・子育ての神
(後姿の写真しかなかった、、、)
神母天は、別名「訶梨帝母(かりていも)」あるいは「鬼子母神(きしもじん)」。
子ども・子育てを守護する神です
詳しく>>>訶梨帝母(鬼子母神)とは? - 安産・子育て・子どもをまもる神。
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3列目メンバー
向かって右端→左端の順で紹介しています。
乾奪婆王(けんだつばおう):音楽神、神々が飲む蘇摩酒の番人
乾奪婆(けんだつば)は帝釈天に仕える音楽神。
蘇摩酒(そましゅ)という、神々が飲むお酒の番人でもあります(本人はお酒はのまず、お香ばかり食べている)。
持国天の部下ともいわれます。
畢婆迦羅王(ひばからおう):蛇を神格化した音楽神
畢婆迦羅王も音楽神。
大蛇を神格化した存在とも言われます。
金色孔雀王(こんじきくじゃくおう):毒蛇を食べる孔雀を神格化
金色孔雀王は、毒蛇を食べる孔雀を神格化した存在。
密教では「孔雀明王」として、温和な表情で孔雀に乗る仏の姿で表わされます。
孔雀明王の優雅な姿からは、金色孔雀王(二十八部衆のときの姿)とギャップがあって、なかなか同一の存在とは認識しづらいのですが……
そもそも孔雀という動物が、あの鮮やかな姿で毒虫や毒蛇を攻撃するわけなので、ギャップありき、というか、現実を反映しているのでしょうね。
梵天(ぼんてん):釈迦に布教をすすめた創造神
元は古代インドの神で、仏教に取り入れられて「梵天」となりました。
お釈迦さまに仏教を広めるように勧めたといわれています。
詳しく>>>梵天とは? - お釈迦さまに仏教を広めるようすすめた創造神
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(梵天と帝釈天の間のエリアに千手観音・不動明王・降三世明王)
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帝釈天(たいしゃくてん):戦士の守護神
古代インドの天候(雷とも)の神で、のちに仏教の守護神となった帝釈天。
闘いの神でもあるので、衣類の下に甲冑をまとっているのが確認できます。
詳しく>>>帝釈天とは? - 戦士の守護神 & 釈迦の全生涯の目撃者
大弁功徳王(だいべんくどくおう):別名「吉祥天」
大弁功徳王は、吉祥天のことで、豊穣の女神。
元は古代インドの「幸運と美の女神」でした。
詳しく>>>吉祥天とは? - 豊穣と福徳を司る女神
満善車王(まんぜんしゃおう):2人の夜叉が合わさった存在
2尊の夜叉が合わさった存在といわれています(諸説あるようです)。
右手に小槌を持っているのが特徴。
迦楼羅王(かるらおう):半分トリで半分ヒト
八部衆グループにも所属している迦楼羅王。
頭が鳥で身体がヒトというインパクトあるお姿。
(参考)風神・雷神
風神・雷神は二十八部衆ではありませんが、二十八部衆と一緒に祀られることが多いようです。
自然現象を神格化した存在で、風雨をととのえる神です。
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二十八部衆の実例
京都 三十三間堂
ズラリと並ぶ千体の千手観音が圧巻の三十三間堂。
千手観音たちの前に、二十八部衆と風神雷神が安置されています。
公式サイト>>>蓮華王院 三十三間堂
京都 清水寺 本堂内々陣
像高1.3~1.4メートルのお像群。
近くで観ると、彩色が残っているのも確認できます。
お像の特徴から、慶派の流れを汲む七条仏師(京都の七條にあった仏像工房の仏師たち。康音を中心)によって、江戸時代初期につくられたものと考えられています。
千日詣り(8月9日~16日)などに拝観可能。
おわりに
半分動物の姿だったり、武将姿だったり、天女だったり、と個性豊かな二十八部衆。
それぞれが専門分野で力を発揮してくれるので、全方位をカバーできる頼もしいグループです。
若い頃に三十三間堂に行ったときは、迦楼羅王などを見て、「ずいぶん変わった仏像がいるんだなあ」くらいの感想でしたが……今となっては「なんであのときもっとちゃんと見ておかなかったんだ!」という気持ちです。
またお訪ねしたいと思います。
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)
興福寺公式サイト>>>https://www.kohfukuji.com/
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