金剛力士(こんごうりきし)・執金剛神(しゅこんごうしん)とは?
お寺の大きな門の左右に、厳しいお顔で立っている金剛力士。
「仁王(におう)さま」という呼び方のほうがよく聞くかもしれません。
お寺や仏教を守る守護神です。
もともとは、執金剛神(しゅこんごうしん)という、お釈迦さまの守護を担当する仏で、二人組ではなく、単独で祀られていました。
〇 2神でひと組の場合→金剛力士(阿形・吽形)or 仁王
〇 単独で祀られている場合→執金剛神
と考えてよいようです。
両者ともに共通する特徴は「金剛杵(こんごうしょ)」という武器を持っていること。ルーツをたどると「稲妻」からきていて、さらに「ダイヤモンド」の意味もあるので、「すごい力の象徴」といったところでしょうか(密教では煩悩を破る武器でもある)。
金剛力士と執金剛神、それぞれの詳しい特徴を見ていきましょう。
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金剛力士(仁王)像の特徴
2神でひと組
阿形(口を開けている)と吽形(口をとじている)で対になっています。
阿形の「阿(あ)」はサンスクリット語の最初の音、と吽形の「吽(うん)」は最後の音。
つまり、「はじめから終わりまで」を示しているのだとか。
上半身裸で筋骨隆々(※)
甲冑よりも硬いのではないかと思うほどの筋骨隆々っぷり。
血管もあちこちに浮き上がっています。
(※)ただし、日本の古い時代の金剛力士像は、上半身裸ではなく、甲冑をまとっています(神将形:しんしょうぎょう)。
坊主頭かと思いきや、頭頂部でちょこんと髪を結っていたりする
スキンヘッド風に見えるのですが(※)、実は頭頂部に髻(もとどり:束ねた髪のこと)を結っている例も。
超強い系の風貌なのに、おだんごをちょこんと乗せているみたいで、なんともかわいらしいと私は感じてしまいます。
(※)興福寺のお像など、髻を結わず、剃髪(坊主頭)スタイルのものもあります。
執金剛神(しゅこんごうしん)像の特徴
2人組でなく、単独で祀られている場合は「執金剛神」と呼びます。
単独で祀られる
仁王像の場合は、お寺の門などに対で安置されますが、執金剛神の場合は単独で堂内に祀られます。
武将の姿
基本的には古い時代の像となるので、上半身裸形ではなく、甲冑をつけた武将スタイル。
作例が少ない
執金剛神は作例が少なく、仏像については東大寺法華堂のお像と、快慶作(京都金剛院)のお像が知られるくらいのようです。
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金剛力士像の実例
上半身裸で筋骨隆々タイプ
奈良 東大寺 南大門
有名な慶派仏師たちが69日で完成させたという、8メートル超えのお像。
詳しくは>>>東大寺 南大門 - 慶派仏師による仁王像と日本最古の石獅子
shishi-report-2.hatenablog.com
長野 善光寺
近代日本を代表する彫刻家、高村光雲による仁王像。
>>>善光寺 - 高村光雲作の仁王像
shishi-report-2.hatenablog.com
武将タイプ(古い形式)
奈良 東大寺 法華堂
甲冑を着た、奈良時代の金剛力士立像。
阿形は髪を逆立て、ひげもたくわえるワイルドスタイル。
>>>東大寺 法華堂の仏像たち - オール国宝&3~4メートルの迫力あるお姿
shishi-report-2.hatenablog.com
執金剛神像の実例
奈良 東大寺 法華堂(秘仏)
武将スタイルで、単独で祀られています。
秘仏のため、お姿を拝見できるのは年に一度だけ。
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おわりに
金剛力士と執金剛神の見分け方をまとめます。
例外もありますが、だいたいはこの法則でよさそうです。
・お寺の門にいる
・2神で対になっている
・片方は口を開け、もう片方は口を閉じる
→金剛力士(仁王)
・金剛杵を持っている
・武将の姿
・単独でお堂内にいる
→執金剛神
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参考文献
仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる (池田書店のハンドブックシリーズ)