2024年2月~4月7日まで、あべのハルカス美術館で開催された「円空ー旅して、彫って、祈って」の観覧レポートです。
どんな展覧会?
・円空は旅をしながら行く先々で大量の仏像を彫った江戸時代の修験僧
・「12万体彫る」と誓った(うち5000体くらい残っている)
・初期から晩年の代表作を展示
・あべのハルカス美術館のみでの開催
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観覧レポート
「行かねば行かねば」と思いつつ、終了間際にやっと行けました。
会場入口にいらしたお二方。
会期終盤でしたが、平日&内容がシブめだからか、そこまでの混雑ではなくてホッとしました。
会場に入りまして、まず金剛力士像(いわゆる「仁王」)が迎えてくれます。
一部撮影可能だったので、早速撮影。
一般的な金剛力士像とは印象が違って、ほほ笑んでおられる(それが円空のつくったお像の特徴ではあるが)。
髪型や牙なども、どちらかというと明王っぽいテイストな気がしますね。
千光寺のお像エリア
円空は、住職の舜乗(しゅんじょう)と意気投合して、飛騨の千光寺にしばし滞在したらしく、千光寺に多くのお像が残っています。
今回の展覧会にお出ましの仏像も千光寺蔵が多かったです(しかも撮影可能でした)。
両面宿儺(りょうめんすくな)坐像
わりと仏像を観てきたほうだと思いますが、初めてその名を知る「両面宿儺(りょうめんすくな)」坐像。
展覧会チラシにはこう書かれています。
千光寺を開いたとされる異形の人物。
『日本書紀』では大和朝廷に服さぬ逆賊とされているが、飛騨や美濃では土地を開拓し豊かさをもたらした英雄として伝えられている。
展覧会チラシより引用
両面宿儺像は、前後にお顔がついているお像が多いらしいのですが、円空作のお像は肩越しにもう一つのお顔がぬっと出現しています。
不敵な笑みを浮かべているようにも見える表情といい、肩越しのもう一つのお顔といい、なんともいえない不思議さ。
観音三十三応現身立像
相手の状況に応じて、33もの姿に変身するといわれる観音様。
そのエピソードちなんで33体なのだろうと思います。
村人が病気のときはこのお像を借りてきて、枕元に置いて、治るのを願ったそう。
昔は病気のときも祈るくらいしかできなかったでしょうから、心のよりどころだったのでしょうね。
びんずる尊者
円空自身の姿という説もあるようですが、身体がつるつるしていて撫でられた形跡があるので、賓頭盧(びんずる)尊者だろうとのこと。
やや首をかしげたような姿勢や、ホッとさせられる表情に癒されます。
不動明王&二童子
烈火のごとくお怒りのはずの不動明王ですらほほ笑んでいる。
なんだかほっこりしてきました。
ボディは人魚っぽいですが、頭部は弁髪だし、不動明王だと明瞭にわかるように彫ってあるのがすごい。
護法神立像
護法神は仏教を守る神様(四天王や金剛力士などもここに含まれる)。
いわゆる「天部」と同等のイメージなのかなと思います。
とても薄くて、仏像というよりは板彫りみたいな印象。
「12万体彫る」と決意していたら、木材にこだわってもいられませんから、片っ端から彫っていったのかな。
薄いほうが彫りやすかっただろうし。
狛犬
下保白山神社に伝わった狛犬。
簡素なフォルムながら、身体についている唐草みたいな模様もあり、ひと目で狛犬とわかりますね。
頭に載せた三角帽子のようなものがかわいい。これがツノを表しているのだろうとのこと。
小像
ダイナミックなノミ跡が特徴の円空ですが、頼まれればこういう小さいお像も彫っていたそうです。
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おわりに
いろんな仏像に会ってきましたが、よくよく考えてみると、円空のお像をしっかり見たのは初めてでした。
粗削りというか、自然と同化するような作風、程度にしか思っていなかったのですが、とても不思議な印象が残りました。
たぶん、荒々しいノミの跡とほほ笑みという、一見真逆の要素が混在しているからなのかな。
怒りの表情のお像であっても、口元の笑みを残した円空は、優しい人だったのかもしれません。
「12万体彫るぞ」と誓いを立てたのは、おそらく薬師如来の12の誓願にちなんでいるのでしょうね。
実際どのくらい彫ったのかは円空にしかわからないですが、そういう「生涯の目標」があると、生きることのふとした虚しさが少し薄れそうで「いいなあ」と感じました(私も何か見つけたい……あ、このブログがあるやんけ)。