本記事は、2021年7月17日~9月12日に奈良国立博物館で開催された特別展「奈良博三昧ー至高の仏教美術コレクションー」の観覧レポートです。
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どんな展覧会?
勝手にざっくり言い換えるなら「奈良博行ったらコレ見ときな!」展。
私がまだ仏像について詳しくなかったとき、こんなことを思った記憶があります。
「奈良博って仏像館もあるし、すごいのはわかるのだけど…… 東京国立博物館にも貴重な仏像は多々あるし……つまるところ、奈良博の個性というか、みどころ(推しポイント)って何なんだろ?」と。
そんな、かつての仏教美術初心者だった私への回答が、今回の特別展に表れているかなと感じました。
仏像について知れば知るほど、奈良博のすごさを実感します。
撮影OKがうれしい!
なんと本特別展「奈良博三昧」では、撮影OK!
撮影した写真も、営利目的でなければSNS等に載せてOK(※一部をのぞく)とのこと!
ただし、他の方の迷惑にならないように(肖像権にも注意)。
東京国立博物館(トーハク)では、以前から一部の常設展示品については撮影OKだったので、「奈良博もいつかそうならないかな~」と思っていたら、まさかの今回、特別展なのにOK。
これは仏像好きにはうれしい。
というのも、仏像は「仏さま」でもあるので、お写真を撮れないことがほとんど。
仏像の魅力を伝えるために、基本的には文章や絵でがんばるのですが、どうしても写真にはかなわない部分も。
そのもどかしさを今回感じなくてよいということで、撮りたての写真を貼りつつ、魅力をどしどし語っていきたいと思います。
特別展にお出ましの仏像たち
仏像以外にもいろいろ展示されていますが、本記事では仏像に特化して書いています。
珍しかったり、ちょっと驚きのあるお像を中心に挙げています。
出山釈迦如来立像(しゅっせんしゃかにょらいりゅうぞう)
6年に渡る苦行の後、「苦行は無意味」と悟って山を降りた釈迦の姿を表した彫像。
苦行の後なので、頬はこけ、あばら骨が浮き上がっています。
目元もちょっと開ききれないというか、虚ろに見える。
お腹も空いていたでしょうから、力が出なくて歩くのもやっと、という感じが前かがみの姿勢に表れています。
この、山を降りる釈迦のお像、非常に珍しいのです。
奈良博が保管していることは知っていたのですが、ここ数年は仏像館のほうにも出陳されておらず(たぶん)、私も今回初めて拝見できました。
入場してすぐのところにおられるので、「いきなりすごいの来たー!」という感じ。
南北朝時代の貴重なお像です。
力士立像(りきしりゅうぞう)
「力士」と聞くとお相撲さんを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうか。
仏教でいう「力士」は、「仏教のガードマン」的な役割です(金剛力士(お寺の門にいる仁王像)などもそうですね)。
説明パネルの英訳にも「Guardian」とあります。
ポージングをよく見ると、片方の手のひらはこちらに向けているので、やはり金剛力士に近い存在だろうと推察します。
しかし……ガードマンにしては、やたら愛嬌のある表情。
輪郭はがっちりしているので頑丈そうではありますが。
あまり日本では見かけないような風貌(制作場所は不明)で、奈良博でも目立つ存在です。
如意輪観音(にょいりんかんのん)
智も財も、思うがままに叶えてくれるという如意輪観音。
6本の腕を持ち、輪宝と宝珠を持っています。
頬に手を当てているのは思惟手(しゆいしゅ)といって、考え事(いかにして多くの人々を救うか)をしていることの現れ。
上の写真のお像はわりと肉付きがよいタイプですが、もうおひと方、お出ましでした。
こちらのお像は優美なイメージですよね。
同じ如意輪観音でもかなり印象が異なるのが興味深いです。
(如意輪観音についてより詳しく知りたい方はこちら)
五大明王(ごだいみょうおう)
救うのが難しい人々を、厳しさをもって救おうとしているのが明王(みょうおう)。
「明王」にはいろんな方がいますが、密教の5つの智慧が明王の姿に変身した存在が「五大明王(ごだいみょうおう)」。
五大明王のメンバーは、
「お不動さん」としておなじみの、不動明王(ふどうみょうおう)。
シヴァ神夫婦を踏みつけている降三世明王(ごうざんぜみょうおう)。
身体中にヘビを巻き付けている軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)。
水牛にまたがる大威徳明王(だいいとくみょうおう)。
金剛杵(こんごうしょ)という武器で悪をはらう金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)。
平安時代のお像で、五体揃っているのは珍しいそうです。
たしかに私自身も、セットになったお像としては東寺の立体曼荼羅か、醍醐寺のお像くらいしか拝観したことがないので、「おお」となりました。
個人の方が祈祷の際のご本尊にしていたのでは、とのこと(説明パネルより)。
各明王についてもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
獅子
奈良博の動物部門代表といえば獅子。
元は文殊菩薩を背上に乗せていたようです。
獅子というより犬っぽいですよね。
口を閉じているのと、毛が短いのがとても珍しいです。
足元が蓮華の台座になっているのもかわいい。
ちなみに、奈良博を代表する獅子がもう一体いるのですが、そちらは後期に展示(8/17~)。
伽藍神立像(がらんしんりゅうぞう)
奈良博を語るには、このお方も外せません。
以前は「走り大黒」とも呼ばれていたようですが、現在は「伽藍神(がらんしん)」という、寺院を守る神様だということが判明しています。
なんとこのお方、かつては手に槌と釘を持っていたのだとか!
修行を怠るものがいれば釘を刺してこらしめるのだそう!
童顔というか、なんとなくあどなさの残るお顔ですから、釘を刺してこらしめるエピソードとのギャップがすごい。
全身から躍動感を感じます。
後姿もいい。
仏像についてのまとめ
個人的にはやはり、「出山釈迦如来像」が印象的でした。
伽藍神立像は、なら仏像館の常設展示で何度か見ていましたが、背中側まで回ることはできなかったので、今回後姿も拝めて満足です。
本記事では紹介しきれませんでしたが、薬師如来、阿弥陀如来、十一面観音、地蔵菩薩などなど、定番の仏像たちも出陳されています。
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参考情報
地下回廊で写真撮ってもらえます
観覧後、地下回廊(カフェやショップのあるところ)に行くと、本格的な写真撮影ブースがあり、プロの写真屋さん(小路谷写真株式会社)がいました。
「奈良博三昧」のポスターに入り込んだようなデザインの写真を撮ってもらえます。
しかも、小さいサイズでプリントしたもの(来場記念カード)は無料(!)でいただけます(※大きいサイズのプリントや写真データをご希望の場合は1200円)。
この、無料の来場記念カードだけもらうつもりが、いい写真だったので(→やはりプロ)つい大きいものを1200円で買ってしまいました(仏像好きとしては仏像に囲まれているのも嬉しいし)。
中年になると写真を撮る機会も減るので、良い記念になったなと思います。
ご家族写真としてもおすすめです。
1階にも撮影スポットあり(こちらはセルフで)
自撮り派の方々は、1階(会場を出てスロープを下りたあたり)に撮影スポットがありますので、そちらもどうぞ。
なら仏像館もあわせてどうぞ
特別展のチケットで、なら仏像館と青銅器館もごらんになれます。
特別展だけでもけっこう見ごたえがあるので、疲れてしまったという場合には、仁王像だけご覧になるのでもよいかも。
>>>5メートル超!金峯山寺の金剛力士立像が奈良博にやってきた(~令和10年頃までの予定))。
総合ガイド>>>【奈良国立博物館】年パス持ちのファンがつづる観覧ガイド【総合】
shishi-report-2.hatenablog.com