興福寺 南円堂(なんえんどう)
興福寺境内の南西にある南円堂。
10月17日のみ開扉となります。
特別開扉の日は、普段よりも南円堂周辺が混雑していました。
南円堂の左手に設置された白いテントで拝観券を提示し、普段は柵で囲んであるエリアへ。
そこから見上げた南円堂の写真。
以降は撮影禁止となります。
開かれた扉の手前で靴を脱いでお堂内へ入りました。
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南円堂配尊図
南円堂といえば、康慶(運慶のお父さん)をリーダーとする慶派仏師による作品が密集していることでも有名(すべて国宝)。
不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)を中央に、その周囲を法相六祖(ほっそうろくそ)坐像と四天王が囲む配置になっています。
不空羂索観音菩薩(ふくうけんさくかんのん)(国宝)
まず不空羂索観音菩薩の大きさに驚きました(参考:不空羂索観音って? )。
像高 336 cm!
3メートル超なので、かなり見上げる感じになります(もうちょっとこぢんまりした感じかと思っていた)。
金色に光る身体、繊細だけれども豪華な後背、大きな台座。
頭のてっぺんから台座まで、一切のぬかりがないというか、とにかく圧倒的でした。
正面で少しかがむか座るかすると、目もバッチリ合います。
目が三つ、手は合計八本のスタイル。
錫杖や蓮の花、払子、羂索などをお持ちでした。
羂索(縄)のおかげで全員救える→空しくないので「不空」なんですね。
康慶とその弟子たちが15か月かけて造ったそうです。
法相六祖坐像(ほっそうろくそざぞう)(国宝)
そして、不空羂索観音菩薩の隣に座る高僧たち(法相六祖坐像:法相宗に貢献したお坊さんたち)のリアリティ!
実は私、2017年に東京国立博物館にて開催の「運慶」展にて、この法相六祖坐像を観たことがあったんです。
もちろんそのときも感動はしたのですけど、記憶が薄れて「ああ、あの偉いお坊さんたちね」くらいの意気込みでいたら、改めて本場で観る法相六祖坐像はすさまじかった。
たまたま隣にいらした見知らぬ紳士が「今にもムクッと立ち上がりそうだな」とつぶやいていましたが、まさにそれ!
慶派の仏像といえば、写実性がものすごく高いことが特徴の一つだと思いますが、どうしたらあんなふうに彫れるのでしょうか。
私自身も彫刻を習っていたことがあり、その難しさを知っているので、余計に不思議でならない。
玉眼(ぎょくがん)に光が反射すると、もうほとんど「生きている」ように見えます。
表情だけではなく、少し猫背の感じとか、衣のひだとか、思わず「ほおおおお」と見入ってしまう。
我を失ったかのように呆然と見続けていた若者を見かけましたが、「わかる、すごいよね、わかる、康慶チーム天才だよね」と心の中で勝手に共感していました。
四天王(国宝)
同じく康慶チーム作の四天王も良い!
大柄で迫力があります。
強い風に吹かれながらごうごうと燃える感じの後背もいい。
多聞天などは、ふくらはぎあたりの着色がかなりはっきり残っていて、これまた技術力の高さがうかがえました。
蛇足ですが、私が注目したのは増長天が踏んでいる邪鬼。
邪鬼といえば、仏教では悪の象徴ですから、なかなかアクロバティックな姿勢で、苦悶の表情を浮かべています。
この邪気も例に違わず、醜い造形なのですけれども、さらに追い打ちをかけるかのごとく、顔がボツボツしているのです。
ボッツボツ、イボイボです。
(経年の変化でボツボツになったのかなと思ったのですが、どうも元からボツボツしているのでは、という感じでした。ボツボツさせることよって「悪」を表現しているのでしょう)
こういう細かいところまで手の込んだ演出もたまりませんね。
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興福寺のほかの仏像
北円堂には、運慶率いる慶派仏師たちによる仏像が安置されています。
無着・世親菩薩は「運慶の最高傑作」といわれるほどの見ごたえ。
shishi-report-2.hatenablog.com
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