奈良国立博物館にて2023年7月8日~9月3日まで開催された「浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展 聖地 南山城 ー奈良と京都を結ぶ祈りの至宝ー」の観覧レポートです。
★東京国立博物館では2023年9月16日~11月12日の日程で開催されます。
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どんな展覧会?
・南山城は京都の最南部(奈良市に隣接)の地域
・7世紀ころには寺院の建立
・山岳修験の拠点という面も(木津川流域)
・浄瑠璃寺の九体阿弥陀像の保存修理完了、2軀がお出ましに
観覧レポート
修理したての浄瑠璃寺の阿弥陀様
『観無量寿経』というお経では、死後の世界は9つ存在すると考えられます。
生前の行いによってどの世界に行くかが決まるそうです。
この9つの世界を9体の阿弥陀仏で表現したのが「九体阿弥陀」。
9体すべて残っているのは、京都南部にある浄瑠璃寺のみ。
5年に渡り保存修理が行われ、2023年の3月に終了。
一旦はお寺に戻る予定だったらしいのですが、お披露目されることになったそう。
今回の展覧会では「その1」と「その8」の阿弥陀様を拝見できました。
まず、なかなかの大きさ。
この大きさの仏像が9体も集合していると考えると、ぜひ現地(お寺)でも拝見したい!と感じました。
全体的なサイズ感やお姿は非常に似ているのに、近くで観るとお顔立ちが全然違うことにも驚きました。
(9体つくるとなると多数の仏師が関わっているでしょうから、やはり個性が現れるものなのでしょうかね)
座っている十一面観音像(現光寺所蔵)
十一面観音像といえば、立っているお像がほとんど。
基本的に菩薩(観音さま含む)はいろんな世界に出向いて人々を救済しつつ、自身も修行している身なので立像が多いのです。
(ちなみに菩薩よりも上の位の如来は、説法や瞑想をしているので坐像がほとんどとなります)
しかし、現光寺の十一面観音像は座ったスタイルで、非常に珍しいです。
補陀落山(ふだらくせん:観音さまが降臨する山)に座っているイメージで造られているのでは、とのこと。
(詳細は>>>現光寺十一面観音坐像の造立背景をめぐって |杉崎貴英(京都造形芸術大学通信教育部専任講師))
また、お像の特徴から、鎌倉前期の慶派仏師による作品と考えられているそう。
たしかにお肌のすべすべな感じとか、衣の繊細さとか、慶派の雰囲気が出ていて美しい。
珍しい仏像も
木津川流域は山岳修験の拠点という面もあり、修験道や密教関連のお像が展示されていました。
牛頭天王立像(ごずてんのうりゅうぞう)京都・朱智神社
牛頭天王は、神仏習合の神様(八坂神社の祭神)。
神社にまつられるのですが、仏教の「天部」っぽい風貌です。
忿怒相で牛の頭を乗せています。
朱智神社は、山城・河内・大和の境界の山城側に位置しているため、邪鬼が入ってこないように牛頭天王像を安置したのだろう、ということでした。
天に矢を放つ愛染明王(京都 神童寺)
愛欲を悟りへと浄化させる愛染明王。
愛染明王のうち、顔の正面で弓をかまえ、天に向けて矢を放とうとする姿の形式(「天弓愛染明王」と呼ばれることも)があります。
比較的珍しい形式ですが、神童寺のお像がまさに天弓タイプでした。
私も天弓タイプは初めてお目にかかったので、「おおっ」となりました。
ちなみに、なぜ矢を放たんとする姿かというと、弓矢で人々の心を惑わせるものを射るのですね。愛染明王が登場するお経の記述「衆星の光を射るが如し」を表現しています。
愛染明王は、頭に獅子の冠を乗せていたり、宝物を出す壺に座っていたり、とけっこう豪華でみどころがたくさんありますので、好きなお像の一つです。
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おわりに
南山城という地域は京都でありながら奈良市に近く、かといって奈良市からアクセスするのもそれなりに労力がかかるエリア(お寺によっては最寄りのバス停から徒歩40分なんてことも)。
なので、なかなかお寺に行くことができず、「いつか拝見したいなあ」と思っていたので、貴重なお像たちを博物館で観られるのはいい機会でした。
といいつつ、特に九体阿弥陀像などは「全員お揃いのところを拝見したい」と思い、ますますお寺に行きたくなったのでした。
観光シーズンはこのエリアを巡る観光バスが奈良から出ているようなので、阿弥陀さまがお寺に戻られた頃にお訪ねしてみるものいいかも。
★調べてみました→「木津川古寺巡礼バス」7/8~10/1(土日祝のみ)と 10/7~11/26(土日祝のみ)まで運行しているようです(JR奈良駅発)。
奈良交通のチラシ(PDF)https://www.narakotsu.co.jp/news/pdf/news_1509.pdf