仏像、ときどきワンダー観光

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【奈良】十輪院 石仏龕 - 釈迦・地蔵・弥勒(過去・現在・未来)が並ぶ神秘的な空間

本記事では十輪院の石仏龕(せきぶつがん)について詳しく紹介しています。
(十輪院 全体案内は>>>◆十輪院 - 小規模ながら本堂は国宝、珍しい構成の石仏龕も必見のお寺

 

十輪院本堂を撮影した画像

十輪院 本堂

僧侶の方にお声がけして、拝観料を支払い、堂内へ。

檀ごしに手を合わせた後、石仏龕の前まで行き、僧侶の方に詳しく説明していただきました。

理解不足なところもあるかもしれませんが、詳しく説明していきます。

石仏龕 イメージ図

本堂内撮影禁止ですので、石仏龕のイメージを描いてみました。

石仏龕の大きさは間口 2.68 m 奥行 2.45 m 高さ 2.42 mですので、本堂の奥に小部屋がある、というような感じです。

十輪院の石仏龕のイラスト

石仏龕 イメージ

石仏龕の構成

手前の柱が大門、次の柱が中門を意味していていて、お寺の伽藍(がらん)形式になっているのだそうです。

ご本尊は地蔵菩薩

石仏龕の中央におられるのが石造の地蔵菩薩

弘法大師(空海さん)が弘仁年間(810~823)に造立した、と伝わっているそうですが、お顔や石の感じからするとだいたい平安時代くらいだろう(※)とのこと。
(※飛鳥よりも古くないし、鎌倉ほど新しくないので)

石仏といえば、経年変化で凹凸がなくなっていることもあると思うのですが、彫りがしっかりと残り、穏やかな表情で癒してくれるお地蔵さんです。
お寺の方や地域の方が、大切に守ってきたのでしょうね。

持物は宝珠(ほうじゅ)。もう一方の手は与願印(手のひらをこちらに向けて下げた状態)です。

「3つの霊験あらたかなお地蔵さん」のうちの1つ(他は、福智院、東大寺の地蔵菩薩)だそうです。

過去・現在・未来

地蔵菩薩の左に釈迦如来、右に弥勒菩薩が浮き彫りで表現されています。

一般的な仏像の配置でいえば、如来が中央にくるのが一般的なので、地蔵菩薩がセンターという配置は非常に珍しいなと思いました。

地蔵菩薩は、釈迦が亡くなってから弥勒菩薩が来るまでの時代、つまり「現在」を担当しています。それに対し、過去を象徴する釈迦如来、未来に登場する弥勒菩薩が並ぶことで、「現在・過去・未来」を表しているんだそうです。

地蔵世界を表現

十王(じゅうおう)

地蔵菩薩の横の壁には「十王」が彫られています。

十王は、地獄で死者を裁くときの裁判官。
十王の一人、閻魔王は地蔵菩薩が姿を変えた存在と考えられるなど、地蔵菩薩と十王は結びついて信仰される面があるようですね。

聖観音・不動明王

位置関係的に、確認はできなかったのですが、釈迦如来・弥勒菩薩が彫られている柱の側面(?)にそれぞれ不動明王と聖観音も彫られているそうです。

四天王・仁王

釈迦如来・弥勒菩薩が彫られている柱の、ひとつ手前の柱には四天王が、さらに手前の柱には仁王が彫られています。

四天王の柱の側面には、五輪塔も彫られています。

星マンダラ

石仏龕の上部や柱には「星マンダラ」なる梵字も彫られています。

上部(フタの部分)に陰刻されているのは「北斗七星」と「九曜」。
仁王の柱の側面に彫られているのが十二宮(太陽の運行経路である黄道を12の星座で分けたもの。いわゆる、星占いの星座ですね!)。

引導石(いんどういし)

龕の手前には平べったい「引導石」が置かれています。

かつての十輪院は、葬儀の場であり、死者の棺をこの引導石の上に置いたそうです(当時の棺は、樽のような形だったそうです)。

「引導を渡す」の「引導」はここからきているんですね。

引導石の両脇には経幢(きょうどう)という石柱が立っています。

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奈良は有名寺院がたくさんあるので、観光ガイドブックにはなかなか記載されない十輪院ですが、石仏龕はかなり珍しい構成なので、仏像好きの方にはおすすめです。

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