仏像、ときどきワンダー観光

おもに仏像のこと。不思議スポットやふつうの観光の話もたまにします

【東京国立博物館】快慶・定慶のみほとけ③ - 肥後定慶の六観音

東京国立博物館にて開催(2018年10月2日~12月9日)の特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」の観賞記録③です。

本記事では六観音をメインに語っていきます。

展覧会の全体情報は

shishi-report-2.hatenablog.com

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仏像の感想

六観音

六道から生き物を救う、六の観音さまグループ。
メンバーは

①聖観音:観音の基本
②千手観音:無限の慈悲者
③馬頭観音:諸悪粉砕怒りの観音
④十一面観音:11の顔をもつ救済者
⑤准低観音:子を授けてくれる
⑥如意輪観音:願いをかなえる仏

(※⑤の准低観音のかわりに不空羂索観音が入ることもあります。)
青文字は『仏像の見方ハンドブック』より引用)

より詳しく知りたい方は>>>【基礎知識】六観音とは? - 六道で苦しむ者を救済してくれる6種の観音菩薩たち



大報恩寺の六観音は定慶(肥後定慶:ひごじょうけい)の作品。
准低観音の像内に定慶自筆の銘があるそうです。

ここで定慶のことを少々。

運慶の弟子に湛慶(たんけい)がいますが、運慶の実の息子さんです。
その湛慶より10歳ほど若い弟子が定慶(じょうけい)。
(運慶次男の康運が定慶に改名したという説もあるらしいです。ウィキペディアより)

定慶もまた、相当な力量があったそうです。
作風にはやはり運慶の影響があるとのこと。

ちなみに、定慶という名の仏師は鎌倉前期には四人もいたのだとか(展示パネルより)。
四人を区別するために、この六観音をつくった定慶は、「肥後定慶」と呼ばれているようです。

運慶・快慶と慶派の美仏 (エイムック 4166)

運慶・快慶と慶派の美仏 (エイムック 4166)

 

 

聖観音の写真

六観音のうち、聖観音のみ撮影OKでした(フラッシュはNG)。

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聖観音菩薩立像


奥の壁に映る光背の模様が美しいですね。
ちなみにこの光背、会期後半には取り外され、観音像の後姿を観られるそうです。

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聖観音菩薩

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聖観音菩薩 横から

私にしては上手に撮れてしまった、と一瞬うぬぼれたのですが、照明がいい塩梅で当たっているので、シャッターさえ押せばこんな感じになります(一般的なデジカメ使用です)。

聖観音の二の腕の質感、リアルですね。
つるつるで、少しふっくらしています。
衣のたなびき方も繊細。


六観音のうち、馬頭観音以外は顔がよく似ていました(馬頭観音だけ憤怒相なので)。
とりわけ准低観音と如意輪観音の顔はそっくりだったような。

とても神秘的な空間でした。

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ほかの仏像

千手観音立像

会場に入って最初に出迎えてくれたのが千手観音。
造られたのは大報恩寺の創建よりも古いようなのですが、いつ頃安置されたかは不明だそうです(作者も不明)。
手は42本、十一面でした。
翻波式衣文(ほんぱしきえもん)が特徴的。

なお、翻波式衣文とは、衣のひだを、丸い波と角の波を交互に彫って表現する方法。平安時代前期のお像に多いようです。

傅大士(ふだいし)坐像および二童子(にどうじ)立像

こちらは大報恩寺近くにあった北野経王堂(きたのきょうおうどう、現在は廃絶)から伝わった彫像。
作者は院隆という仏師で、室町時代のものです。

写真はトーハクのHPに記載のものをご覧ください。

東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」


傅大士という方は輪蔵(中心に柱が立っていて、回転する構造物。一周まわすと、お経を一回唱えたことになる)を初めて作った人。

両脇の童子は傅大士の子ども(普成・普建)。
この二童子の表情がいい。
ニカッと(ニコッとではなく、ニカッと)笑っていて、見ているとなんだか元気がでてきました。
普建のほうは保存状態が良く、着物の柄も結構はっきり見えました。

 

誕生釈迦仏立像

片手を天に、もう片手を地に向けるポーズをしています。
鋳造の原型を作ったのが行快である可能性が高いそうです。
小さいせいでしょうか、行快の作風が出ているかというと、あまりよくわからなかった、というのが正直なところです(見る目が養われていないだけかも)。

天王および羅刹立像

まず、羅刹(らせつ)とは?

もとは、人を食らう悪い鬼。
のちに仏教に入り、仏の守護神となったそうです(十二天のうちの羅刹天)。

この羅刹なる存在が、天王とともに五軀、ガラスケース内に展示されていました。
一体一体は、両手の平に乗るくらいの小さめサイズです。

説明パネルによれば、「説法の聴衆として集まった天部や六道の夜叉として造られたものかもしれない」とのこと。
作者は不明ですが、慶派仏師の作品である可能性が高いそうです


さて、羅刹の外見ですが、鬼というよりは「モンスター」。

五軀いるうち、「羅刹その三」が気に入りました。
「その三」のお顔は、豚とバッファローを足して二で割ったような感じで、愛嬌があります。

また羅刹は、大力で俊足ということなので、ムキムキ・ムチムチの足をしています。
ふんどしスタイルでお尻も丸見えですが、筋肉がすごい。
まるで取組中のお相撲さんのお尻。
お相撲さんよりもさらに引き締まっているかも。
この筋肉足&尻で追いかけられたらたまったものではありません。
心を入れ替えてくれてよかった。